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インタビュー

HOWLER 『America Give Up』



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昨年8月にNMEの特集〈25 New Bands You'll Love〉で大々的に紹介され、その勢いのまま11月には老舗のラフ・トレードからファーストEP『This One's Different』をリリース! さらにヴァクシーンズのUKツアーでのサポート・アクトを経て、今年1月にはNMEが選出する〈100 New Bands Of 2012〉で第1位を獲得!……と、わずか半年の動きを見ただけでも、ハウラーが2012年のロック・シーンの顔役となってしまう理由はわかるでしょう。このミネアポリス出身の若者5人組は、すでに成功が約束されたも同然なのです。そんな折、待望のファースト・アルバム『America Give Up』が到着しました。そこで、バンドの中心人物であるジョーダン・ゲイトスミス君のコメントを引用しながら、彼らの実体に迫ってみたいと思います。まずはバンドの結成について。

「ハウラーはミネアポリスにいたAクラスのミュージシャンの集まりみたいなものなんだ。できる限り最高のグループを作りたかったから、メンバーを集める時はただ友達に声をかけて回るんじゃなくて、僕の大好きなバンドやプロジェクトに携わっていた人を誘ったんだよ」。

2010年の結成からレコード契約、そしてブレイクするまで、普通なら3〜4年は要するところを一瞬で実現してしまった彼らは、ポッと出のシンデレラ・ボーイなんかじゃなく、しっかりと下地のある実力派だったのですね。ちなみにジョーダン君自身、ハウラー結成前にはゲイ・アニマルズというシューゲイザー×メタルコア・グループや、Aカップスというハードコア・パンク・バンドなどで活動していたとのこと。いま作っているサウンドからするとちょっと意外な気もしますが、そもそも普段はどんな音楽を聴いているのでしょうか。

「僕の音楽趣味はバラバラだけど、アルバム用に曲を作りはじめた時はジーザス・アンド・メリー・チェインとコクトー・ツインズをよく聴いていたよ。特に前者をね。『America Give Up』に収録された“Too Much Blood”や“Free Drunk”あたりの曲には、その影響が出ているんじゃないかな? ただ、ハウラーが演奏する音楽の根っこには、ストレートなロックンロールがなきゃいけないってことに気付いたんだ。だからこのバンドのルーツは結構クラシックなものだよ。例えば、ローリング・ストーンズやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ロネッツにバディ・ホリーとか」。

そう、ハウラーの代名詞と言えば、エナジー全開のシンプルなロックンロール! レーベルの先輩であるストロークスやリバティーンズの血をしっかりと継いでいるのです。例えばチルウェイヴだったり、ドリーム・ポップだったり……そういったモワモワしたサウンドが音楽シーンで幅を利かせているなか、『America Give Up』のような作品を待ちわびていた人も多いのではないでしょうか。ちなみに、何でこのタイトルを付けたのですか?

「別に政治的な意見とかじゃなくて、もっと皮肉っぽい、現実的な考え方を伝えたかったんだ。僕らは、アメリカや他の国のみんなががんばりすぎているのを止めさせたいんだと思う。どうせみんな死ぬんだから、諦めてそのことを受け入れるほうがいいんだ。ほとんどの収録曲の中心には、この考え方があると思うよ」。

そうですよね、どうせみんな死ぬんですからね。だからこそ、いまこの瞬間を楽しめってことなのでしょうか。さて、最後に今後の目標についても訊いてみましょう。

「この勢いを持続させて、短い時間にたくさんの良いレコードを作りたい。僕ら全員ハウラーを〈短くて素敵なもの〉にしたいんだ。いまあるこの勢いを切らさず、僕らが疲れきってしまう前に引き上げるためにね」。



PROFILE/ハウラー


ジョーダン・ゲイトスミス(ヴォーカル/ギター)、ブレント・メイズ(ドラムス)、イアン・ニガード(ギター)、マックス・ペトリック(キーボード)、フランス・キャンプ(ベース)から成るティーンエイジャー5人組。14歳の頃から数々のバンドを渡り歩いてきたジョーダンを中心に、2010年にミネソタ州はミネアポリスで結成。NMEの特集〈25 New Bands You'll Love〉に取り上げられて注目を集める。2011年夏にラフ・トレードと契約し、ファーストEP『This One's Different』を限定で発表。同年11月にはヴァクシーンズのサポート・アクトに抜擢される。このたびファースト・アルバム『America Give Up』(Rough Trade/HOSTESS)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年02月15日 00:00

更新: 2012年02月15日 00:00

ソース: bounce 341号(2012年2月25日発行号)

構成・文/白神篤史