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インタビュー

Plastic Tree “静脈”



Plastic Tree - 静脈



[ interview ]

今年でメジャー・デビューから15周年というアニヴァーサリー・イヤーを迎えたPlastic Treeが、2012年の第1弾リリースとなるニュー・シングル“静脈”を完成させた。メランコリックに揺れるギター・サウンドと、4人が一体となって疾走するバンド・アンサンブルが交錯する表題曲のなかに広がっているのは、センティメンタルで青い詞世界だ。

そんな、彼ららしい美点を端的に示した楽曲に加えて、本作には15年前に発表されたファースト・シングル“割れた窓”のカップリング“鳴り響く、鐘”と、アルバム『Hide and Seek』の冒頭曲“痛い青”の再構築版も収録。「“痛い青”と“静脈”の歌詞は、自分のなかで共通項がある」と有村竜太朗(ヴォーカル)は語るが、いまだからこそ対峙できた、〈15年前のPlastic Tree〉とは? そして、現在の4人は? 有村と長谷川正(ベース)の二人に訊いた。



日々変わる発想



――前作『アンモナイト』のツアーが長期に渡っていたということもあると思いますが、新作のリリースがほぼ11か月ぶりで。

有村「そうなんですよねー」

――これほど空いたことって、これまでありました?

長谷川「けっこう珍しいったら珍しいですね。言われてみると」

――〈初回限定盤B〉にも収録されてますが、新曲“静脈”は、2011年12月9日の台湾公演が初演で。そのときの反応はいかがでした?

長谷川「反応は正直ね、あんまり覚えてなくて。新曲だし、演ってるこっちは一生懸命だったから(笑)」

有村「間違えらんないしなあって(笑)」

長谷川「そういう、いい意味での緊張感があって。ただ、演奏が終わってお客さんのほうを見たらすごく受け入れてくれてる感じがあったんで、次のツアーからはお馴染みの曲になるんじゃないかなっていう感触はありましたね」

――私はその後の年末イヴェント〈水曜スペシャル・木曜スペシャル〉で初めて聴いたんですが、青いメランコリアを浮かべたギター・サウンドと、抑えきれないエモーションを乗せて走るバンド・アンサンブルが滑らかに交錯する……Plastic Treeの美点が詰め込まれた楽曲だな、と思って。原曲は長谷川さんですが、最初のイメージはどのようなものでした?

長谷川「普段とあんまり変わらないんですけど、いまのバンドのカラーをしっかり出せて、自分でも聴いてみたくなるような曲が出来たらいいかなあって」

――〈いまのバンドのカラー〉とは?

長谷川「ライヴが多かったっていうのもあると思うんですけど、あの空気のなかで味わったものを音源で表現してみたいっていうのは、無意識にあったのかもしれないですね。ソリッドさだったり、バンドが一丸となって疾走する感じだったり。でもそれだけじゃなくて、例えば浮遊する感覚だとか、緩急をつけた表現だとか、そういう部分を新しい曲に反映できたかなあって思いましたね」

――アレンジは全員でやられてますが、その間に曲はだいぶ変わっていきます?

長谷川「ああ、けっこう変わりますね。今回は楽曲のコード感とメロディーラインから作っていったんですけど、途中で〈メロディーラインをこういうふうに変えてみようか〉とか、あとは〈テンポをちょっといじってみよう〉とか、曲がある程度かたちになってきたところで、作っては壊すまではいかないですけど、作ってはパーツを取り外して違うものをまたくっ付けてみたりとか、そういう作業をしてましたね」

――それはエディットにも近い感じですね。

長谷川「発想が日々変わっていくところがあって。そうは言っても、なんとなく〈あ、きた! これで落ち着きそうだ〉っていうところがちゃんとあるんですよ。ちゃんと収まる、みたいな感じですね。そうなると、もっと細かい部分のアレンジに意識が移っていくので、そうなりはじめたら楽曲のコアたる部分はもう出来たのかなっていう」



血に入り込んだもの



――そして歌詞は有村さんが手掛けていらっしゃいますが、繰り返される〈なまぬるい夢 静かに騒ぐ記憶 青く青く君が流れて〉というフレーズから感じられる、儚い記憶のなかの〈君〉に対する想いが印象的で。この〈君〉というのは、有村さんのなかで具体的な対象があるんですか?

有村「うーん……そうですね……でも一人なのか、何人なのか。入り口はあきらかに一人なんですけど、だんだん観念的なものになりますよね。この曲はメロディーを作る段階から聴いていて詞と曲の制作は同時進行だったんですけど、曲から引っ張り出された感情がそういうもので」

――静脈……血は、もともと自分の身体のなかで巡っているもの、循環しているものでもありますが。

有村「そういうものでもあるし、結局、血に入り込んじゃったものは消えないな、って。そういう気持ちもあるし。沸き出したり、噴き出したりしてくるものでもなくて、静かに、ただトクトク流れてる感じだなーって」

――静かに、自分のなかで流れている気持ち。

有村「うーん、まあ俺的にはそんな感じですかね。血に混ざり込んじゃったもの……まあでも考えようによっちゃあ、はじめからそういうふうに思ってしまう自分の血のイメージもあるし……その象徴としての“静脈”ですね」


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掲載: 2012年02月29日 18:00

更新: 2012年02月29日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓