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インタビュー

LONG REVIEW――Plastic Tree “静脈”



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例えば〈青の時代〉のピカソが暗青色の冷たい色調を駆使して哀しみや憂鬱を描いたように、Plastic Treeの楽曲にとって、色彩感はとても重要なモチーフになっている。新曲“静脈”を聴いて感じるイメージも、やはり青だ。それも青空のような透明感ある爽やかな色合いとは、少し違う。深いプルシアン・ブルー。そしてその色彩感は、胸の奥で静かに疼く痛みのような感覚とリンクしている。

シューゲイザー、グランジ、UKニューウェイヴなど、彼らのルーツを大胆に投影し、甘美で幻想的な世界観を作り上げた前作『アンモナイト』から約1年。メジャー・デビューから15年の間にリリースしたアルバムは11枚と長いキャリアを持つ彼らだが、決して一つのスタイルに安住することなく、貪欲に音楽的な挑戦を繰り返してきた。聴き手の感情に深く染み込むような独特の美学を貫きつつ、そのスタイルは時代に合わせてさまざまな形に変化。最近になって彼らを知ったという10代や20代のファンも多く集うライヴの風景は、その証拠の一つだろう。

そんな彼らが、レーベル移籍を経て一つの原点に立ち戻ったのが、このニュー・シングル。ミッドテンポのアルペジオから始まり、激しくも乾いたバンド・サウンドと甘いメロディーが絡み合う曲調は、彼らが持つ振れ幅のなかでもど真ん中にあるものだ。

〈青〉からスタートしたPlastic Treeのキャリアは、螺旋のように大きな周回を描き、いま、ふたたび彼らはその〈始まり〉を見据えている。だから、通常盤のカップリングとして、ファースト・シングルとファースト・アルバムに収録の“鳴り響く、鐘”と“痛い青”が再録されているのにも、大きな意味がある。音楽的な進化を経て、改めて15年前の衝動と向き合った彼らのクリエイティヴィティーを結晶化したものが、今回のシングルなのだ。


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掲載: 2012年02月29日 18:00

更新: 2012年02月29日 18:00

文/柴 那典