インタビュー

ALEXANDRA STAN 『Saxobeats』



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「私の曲が世界中のあちこちでヒットしてると知って、とにかくすごく、すごく、すっごく驚いているの! 私の曲をみんなが聴いてくれてるってことでしょ。最初はラジオで流れはじめて、そのあとチャートに入ったという話を聞いて……え、ウソでしょ?って感じなの(笑)」。

当人もそう驚くほど、アレクサンドラ・スタンという名前を世界に知らしめた“Mr. Saxobeat”のヒットは規模の大きなものだった。洒脱なホーンのフレーズとキャッチーなフックがダンス・ビートに乗ってひたすらグルグル回る、この中毒性たっぷりなキラー・チューンは、本国ルーマニアはもちろん、ドイツやイタリアなどヨーロッパ各国でチャートを制覇。全英チャートでも3位まで浮上し、USでもクラブ・チャートのNo.1に輝いている。彼女自身の挑発的な肢体をフィーチャーしたPVも再生回数は実に1億2千万回以上(みんな正直ですね!)、この手のセクシーな一発がたまに出てくるからユーロ・ポップはおもしろいのだが、本人に一発屋で終わるつもりなどあろうはずもない。黒海に面するコンスタンツァに生まれ育ったアレクサンドラは、より広いポップ・シーンの海原へと漕ぎ出すべく、少女時代から歌唱力を磨き、デビュー前もその後もたゆまぬ努力を続けてきたのだ。

「実のところ、それほど突然の成功というわけじゃなくて、デビュー曲のリリース前からそれなりに長い道程があったわ。プロデューサーと出会って気の置けない友人になり、制作を経てヒットに至るまで、いろんな試行錯誤を1年半ほど繰り返してきたのよ」。

彼女の言うプロデューサーとは、同郷のマーセル・プロダン。ファーギー“Fergalicious”のフックをモロに引用したデビュー曲“Lollipop(Param Pam Pam)”も彼の手によるものだが、そこでマーセルはファンファーレ・チョカリーアなどでお馴染みのバルカン・ブラスを印象的なループに組み込んでいる。つまり、“Mr. Saxobeat”はその構造をさらに練り込んで生まれたヒットというわけだ。

「ルーマニアの音楽にはバルカン・サウンドの要素が採り入れられていて、それがダンスフロアでも人気なの。私の音楽はそこにエレクトロやハウスの要素を融合させたものよ。ちょうどいい配分で混合されているから、新鮮に聴けるんじゃないかしら」。

このたび日本盤もリリースされるファースト・アルバム『Saxobeats』は、そんな〈ちょうどいい配分〉の多様なポップ・チューンで埋め尽くされている。同系統のブラス・ループに開放的なメロディー展開を持ち込んだサード・シングルの“Get Back(ASAP)”、バンドネオンが哀しげに鳴り響く“Ting-Ting”などは、英米のメインストリームにはありそうでなかったものだろう。他にはニューウェイヴ調のシンセ・ポップ“Bitter Sweet”もあるし、リアーナっぽい小悪魔アーバンな“10,000”はドイツのラッパーだというカールプリットを従えたヤミツキ度満点のフック・ソングだ。

「あらゆる人に喜んでもらえるアルバムを作りたかったの。リヴィングでもベッドルームでも聴けるし、クラブでも、車の中でも、友達といっしょでも、さまざまなシチュエーションで私のアルバムを楽しんでほしいと思っているわ。だからいろいろなタイプの曲が収録されている。ぜひみんなにも気に入ってほしいわね」。

今後はLMFAOやデヴィッド・ゲッタと共演してみたいとも語りつつ、浮わつくことなく地に足を着けて活動していくことが願いだそう。志は高いしセクシーだし、もう最高じゃないか!

が望むのは歌い続けること。「これからも長く歌い続けて、私の曲をみんなに愛してほしいと思っている。そして流行を追うのではなく、流行を作れるようなアーティストになれたらと願っているわ」。



PROFILE/アレクサンドラ・スタン


89年生まれ、ルーマニアはコンスタンツァ出身の女性シンガー・ソングライター。幼い頃から歌の才能を発揮し、地元の音楽祭やコンテストに多数出演して注目を集める。マーセル・プロダンを通じてマーンと契約し、2009年12月にデビュー・シングル“Lollipop(Param Pam Pam)”を発表。本国のチャートで18位まで上昇した同曲に続くセカンド・シングル“Mr. Saxobeat”は、ルーマニアやドイツを含む8か国でNo.1を獲得し、ウルトラ経由で全米リリースもされることに。2011年に入り、サード・シングル“Get Back(ASAP)”も支持を集めるなか、9月にファースト・アルバム『Saxobeats』(Play On/Jeff/Maan/ビクター)を発表。3月7日にその日本盤がリリースされる予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年03月07日 00:00

更新: 2012年03月07日 00:00

ソース: bounce 341号(2012年2月25日発行号)

構成・文/出嶌孝次