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インタビュー

クリスティアン・ゲルハーヘル

盟友ピアニストとの名盤プロジェクトが絶賛進行中!

Christian Gerhaher&Gerold Huber

現在、ドイツ・リートの分野で他の追随を許さないめざましさで活躍中のバリトン歌手ゲルハーヘル。昨年12月のリサイタルでもマーラー歌曲の真の魅力に迫る歌声で東京の聴衆を酔わせたばかり。特に定番のオーケストラ版とは別にマーラー自身が書いたピアノ版《大地の歌》が圧巻だった。

「ピアノに未完成な部分があるので、弾き手は大変だと思うけれど、私はこの稿がとても好きですね。オーケストラがない分、歌唱に音色の自由さの余地が生まれると思うのです」

最新録音では初めてのヴォルフ作品、しかも、ハイゼの訳詩集に基づき、男女間の恋愛にまつわる様々なドラマを46篇の短いシーンで集めた傑作『イタリア歌曲集』に挑戦。ドイツ・グラモフォン期待の新鋭ソプラノ、モイツァ・エルトマンを相方に、21世紀の名盤足る1枚を作り上げた。

「男女で対話させたり、舞台作品のように演出するやり方もあるけれど、今回はオリジナル楽譜での曲順に従って構成しました。全体は大きく2つに分けられると思う。後半は絶対音楽的で、テキストに密着した形で作曲されているというよりは、音楽自体が語りかけてくる点が興味深いです」

情熱的に相手を賛美する歌もあれば、ある時は自嘲的にはにかみ、またある時は嫉妬にかられて苦しんだり、感動したりと、それぞれ違う感情の動きを、さりげなくも的確に捉えた歌唱が見事だ。

「これはシューマンの歌曲にも通じることですが、最小限に切り詰められた短い曲の中に、極度に濃縮された世界が詰まっていて、多くを物語っている。それにはピアノの果たす役割も大きいと思います。今回もゲロルトがうまく導いてくれた」

マーラー歌曲のリサイタルでも伴奏を務めた同じドイツ出身のゲロルト・フーバーは盟友と呼ぶにふさわしい存在。1999年録音のシューベルト《白鳥の歌》以来、ふたりでレコーディングしたドイツ・リートは本作で10枚目を数える。

「他の多くのピアニストが、同じ作曲家ならどれも一貫したアプローチで弾こうとする傾向があるのに対して、彼は作品それぞれが持っている特質やキャラクターを個別に捉えて表現してくれるところに共感できます。それに学生時代からの長いつきあいなので、間のとり方やタイミング等の練習が不要で、もっと細かい部分の解釈に集中して掘り下げることができるのが強みです。今後もこのコンビでウィーン楽派の歌曲集などを録音予定…あっ、《大地の歌》もぜひやりたいですね」

© Sony Classical

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年04月16日 17:41

ソース: intoxicate vol.96(2012年2月20日発行号)

取材・文 東端哲也