INTERVIEW(2)――感情を撒き散らせ
感情を撒き散らせ
――ケーサクさんは?
森田ケーサク(ドラムス/コーラス)「いままでやってない感じのリズムだったりとか、ポップな感じが満載だったんで、新鮮っちゃあ新鮮でしたね。オレは二人に比べてそんなにいろいろ聴いてるほうじゃないんで、やりながら、手探りで勉強しながらのところもありつつ。そういう意味でも新鮮で、〈こういうリズムがあるんだ〉っていう楽しさはありましたね」
――ケーサクさんはもともと、ストレートな8ビート・ドラマーというか……。
ケーサク「そうですね、得意なところがそこなんで、その感じもなくさないようにしつつ、そこに新しい感じを入れながら」
ワタル「あんまり器用じゃないんでね、ウチのドラマーは。どうせ不器用だったら、スピリットぐらい前に出せや!と。それでレコーディング中も、喧喧諤諤な感じで」
ケーサク「“カタルシス”を録る時の話なんですけど、題名が〈カタルシス〉じゃないですか。〈自分のなかのものを吐き出す〉っていう感じなんですけど、吐き出すのが苦手なオレは、毎回レコーディングになると内に籠もって、ちゃんとやろう、ちゃんと叩こうという感じになっちゃうんですけど、〈これはそんな感じの曲じゃねえ〉と。〈感情を撒き散らして、オマエの思うようにやれよ〉ってガンガン言われて、珍しくオレもキレてしまって、〈じゃあやってやるよ〉みたいな感じでやって。本当に歌詞通りに〈うるせえよ〉っていう感じで、感情剥き出しに叩いて、録ったやつを聴いたら、全然良くて」
――ああ。違うんですね、やっぱり。
ケーサク「それがOKテイクになったんですけど。〈それぐらい出してオマエは普通なんだから、常にそれぐらい出しとけ〉みたいな(苦笑)。もう音から何から全然違って、〈これでいいんだ〉というのはありましたね」
――言ってみるもんですね。ワタルさん。
ワタル「まあね。オレもレコーディングの時には、“ダンスホール・ガール”とか、泣くぐらいに感情を込めとるから。そういう意気込みでやっとるのにね、かしこまって下向いておどおどされたら、そりゃ頭にくるわな、みたいな。オレはいつでもバシバシなんで。特にリズムって、モロに感情が出ちゃうから。コイツ(森田)は出ないと思ってたんですよ。だから、〈それはオマエ、違うだろうが〉と。〈音うんぬんじゃねえ、オマエの態度が気に食わん!〉と」
――熱いなあ。
ワタル「ファンもいるのに、ソツなくやろうとか、失礼だよと。せっかく生きてるんだから、全力で生きんと」
メロディーメイカーなんです
――話を戻して。アルバムの収録曲はいつ頃作ってたんですか。
ワタル「震災のあとにできた曲がほとんどですね。去年の6~7月ぐらいに集中して作って、そのなかで“今を生きる”と“カタルシス”“ナイスデイ”とかが生まれてきたという感じです。震災を受けて、暗いものを作りたくなかったし、難解なものにしたくなかったんで、ロック、あるいはパンクのシンプルなフォーマットのなかでやりたかったんですよ。けどビートの効いてるものもあるし、“ナイスデイ”とかはシャッフルのロックンロールという感じでやってるんで、けっこうオシャレだと思うんですけどね」
――甘くしたかったわけじゃないですよね? 口当たり良く、というか。
ワタル「じゃないです。スウィートとか、妖艶とか、マイナー・コードで叙情的な感じとか、本当はそういう感じのほうが似合うんですけど、そうじゃないものをここで一発やっとこう、みたいな意気込みはありましたね。何というか、〈日本に必要なもの〉という感じで作り上げていったんですよ。日本にないから、いま。こういうサウンドは」
――ああ。確かに。
ワタル「ないとですよ、特にメジャーには。アングラにもないな、たぶん。だからね、注目すべきですよ、これは」
――注目すべきですよ(笑)。メロディーがまた、素晴らしくて。本人を前にして言いますけど、すごいですね、このキャッチーなメロディーの連発は。天才的だと思います。
ワタル「メロディーメイカーなんですよ、僕。実は」
ヤス「なんか、キャラ変わってない(笑)?」
ワタル「誰も言ってくんねえから、自分で言わないとさ(笑)」
――いやマジで、いままでの作品のなかでもいちばんメロディーメイカーとしての天賦の才を感じたんで。
ヤス「いやでも確かに、尽きんなぁとは思うよ」
――アルバムを5枚も出せば、焼き直しみたいなメロディーも出てくると思うんですけどね。いつもフレッシュで、シンプルで、キャッチーで。
ケーサク「毎回違うっすね」
ワタル「何でも書けるから。マジで。アイドルに書いたっていいぐらいだよ。意外とそっちのほうが売れるかもよ(笑)」
――それは切ないなぁ(笑)。でも、もともと歌謡曲的な要素は多分に持っているバンドだし、メロディーや歌の強さはDOESの最大の武器だと思いますけどね。
ワタル「口ずさんでいただくと、すごくよくわかるアルバムだと思う。誰でもあるようなもどかしさや、葛藤や、そういうものを明るく消化してる曲がすごく多いから。だから聴いて、覚えて、散歩でもしながら〈フンフンフン〉って口ずさむとたぶん、〈ああ、なるほど〉ってわかるんじゃないかな」
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