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インタビュー

LONG REVIEW――DOES 『KATHARSIVILIZATION』



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昨年2月、サポート・メンバーを加えて4人編成になったDOESのライヴを観た。ステージを終えた氏原ワタルに、僕は「これをやったら、次にやれることはたくさんあるね」と言ったら、彼は「そうなんですよ」と強く答えた。その時のことはいまでも覚えている。

4作目『MODERN AGE』を経て、サウンドの可能性はあきらかに広がっていた。“曇天”や“修羅”のようなストイシズムで押し切るタイプの曲だけじゃなくて、聴き手を軽々と持ち上げるポップな曲がその時点で続々と生まれていた。きっと彼自身も、そのことに自信を抱いていたんだと思う。

でも、彼にはちゃんと言わなかったけど、僕にはあの時、次の課題は歌詞だと思っていた。バンドの持つ精神性をグッと凝縮したような、必殺の1行を持つ楽曲を作ることだと思っていた。彼らはそういうものを作れるバンドだ、と。

だから、この新作『katharsivilization』が届いて、僕はすごく嬉しい。彼らならやってくれると信じていたことが、まさに形になっているようなアルバムだ。

〈僕らの存在が嘘にならないように 消えてしまわないように 今を生きる〉と歌う“今を生きる”を筆頭に、とてもストレートな言葉で歌われている。隠喩や描写ではなく直接的なメッセージが前面に出されている。

もちろん、震災の影響は大きいはずだ。でも、彼らが歌っているのは、単なる応援歌的なメッセージではない。むしろ、誰からともなく連呼され続けた〈がんばろう日本〉という言葉、〈絆〉という言葉の裏側にあるものを照らすものになっている。きっと、そういう言葉が時に誰かを押し潰し、個人の〈生〉を抑圧するものであるということに、気付いているのだと思う。だからこそ、むしろ〈うるせえよ だまれよ〉と叫ぶ“カタルシス”のような曲が収められていることに、僕はグッとくる。

DOESというバンドの骨の部分には、誰かの言う通りにはならない、自分の意志を貫くという精神性が染み付いている。そういうアンチ的な精神を、彼らはきちんと形にした。そういう意味で、このアルバムには、目に見えない抑圧と戦う時、何かに押し潰されそうになった時に支えになってくれそうなタイプの曲が詰まっている。


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掲載: 2012年05月09日 18:00

更新: 2012年05月09日 18:00

文/柴 那典