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インタビュー

カジヒデキ

 

自主レーベルを立ち上げた永遠のネオアコ野郎が、青く燃える魂を込めた新作を完成! そこには持ち前のリスナー気質が散りばめられていて……

 

 

ソロ・デビュー15周年を迎えた昨年のアニヴァーサリー・イヤーを経て、ますます永遠のネオアコ野郎っぷりに磨きのかかるカジヒデキ。気持ちも新たに「いろんなギター・バンドや、もっと自分のカラーが出せる場所を作りたい」と、主催パーティーと同名の自主レーベル・BLUE BOYS CLUBを設立。カジヒデキとリディムサウンター名義の2010年作『TEENS FILM』を挿み、2年7か月ぶりとなるオリジナル・アルバム『BLUE HEART』を完成させた。

「インディー・ロックのテイストにこだわることなく、みんなが素直に良いと思える曲をいろんなサウンドで作りたい」という思いから、新作は「大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』みたいなエヴァーグリーンな音楽」を裏テーマに制作をスタート。持ち前のグッドなメロディーセンスがさらに増し、爽快なギター・ポップを軸に、音の振り幅のある〈カジ流ポップ・ミュージック〉が次々と飛び出す作品となった。

「今回は自分がプロデュースした曲と、(Charaなどを手掛ける)橋本竜樹君がプロデュースした曲の2パターンあるんです。竜樹君はこれまでも制作を手伝ってもらってたけど、彼のプロデュース曲は今回、完全に託していて。それで音も広がったし、僕のデモがアレンジでガラッと変わったり、すごくおもしろかったですね」。

歌詞の面ではポジティヴでストレートに響くものが多く、それには「やっぱり震災の影響がある」と。さらには「どっぷりハマった(笑)」らしいイアン・デューリーの影響もあったそうだ。

「2年前にイアン・デューリーの伝記映画『Sex & Drugs & Rock & Roll』をDVDで観て、急に大好きになったんです(笑)。ファーストの『New Boots And Panties!!』を改めて聴くと、ブラーからパルプから、自分の好きなバンドはみんな影響を受けてたんだなって。言葉にこだわってる人で、僕もいまさら韻を踏んでみたりしました(笑)」。

本作は、アズテック・カメラ“All I Need Is Everything”を彷彿とさせるサウンドに90年代の渋谷系時代を振り返る言葉を乗せ、まだまだ〈ヤング・アット・ハート〉で進んでいくと歌う“トリコロール・フィーバー”から始まる。そして、ホーンの音色と爽やかなメロディーが心地良い“ビーチボーイのジャームッシュ”の歌詞は、「いくつ出てくるか当ててください(笑)」というほど映画のタイトルが満載。そのなかに〈自分らしく行こう〉というメッセージが込められているが、まさにジム・ジャームッシュのモノクロ映画へ自分なりの色を付けていくようなイメージが浮かぶ。また「今回の曲作り中に、ウィングスのベスト盤『Wings Greatest』をよく聴いていた」とのエピソードがズバリ反映されたブリティッシュ・サイケ・ポップ・フレイヴァーの“小さな光、新しい光”は、夢に向かっていく力強い思いとミディアムテンポの明るいサウンドが絶妙にマッチした、今作のコアになる一曲と言っていいだろう。カラフルで瑞々しい彼の音楽性を堪能できる『BLUE HEART』。このタイトルには、彼が根底に持つ信念が詰まっている。

「もちろんブルーハーツっていう偉大なバンドもいるけど、でも自分が使う『BLUE HEART』は、言ってみればネオアコの魂、熱いスピリットがその言葉に集約されているんです!」。

メラメラと燃える青い炎を胸に秘めたカジヒデキ。夏にはツアーも行われるが「ライヴは爆発!」と岡本太郎のように息巻くほど、彼のハートはアッツアツ。いくつになろうと〈BLUE HEART〉を持ち続け、フレッシュなポップスを作っていくこと間違いなしだ。

「このアルバムは新たな一歩になると思ったし、作ってる時はソロ・デビュー前の気分に近いくらいに気合いが入ってましたね。結果、同世代にも若い人にも伝わる、すごく良いテンションのアルバムが出来たと思ってます」。

 

▼『BLUE HEART』に参加したアーティストの作品を紹介。

左から、Keishi Tanakaの2012年作『夜の終わり』(Niw!)、住所不定無職の2011年のシングル『トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!!』(DECKREC)、Salon Musicの2011年作『Sleepless Sheep』(felicity)

 

 

▼カジヒデキの近作を紹介。

左から、カジヒデキとリディムサウンターの2010年作『TEENS FILM』、カジヒデキの2009作『STRAWBERRIES AND CREAM』、同2008年作『lollipop』(すべてfelicity)

 

 

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、大瀧詠一の81年作『A LONG VACATION』(NIAGARA)、イアン・デューリーの77年作『New Boots And Panties!!』(Stiff)、アズテック・カメラの84年作『Knife』(Rough Trade)、ウィングスのベスト盤『Wings Greatest』(Parlophone)

 

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年05月16日 17:59

更新: 2012年05月16日 17:59

ソース: bounce 344号(2012年5月25日発行)

インタヴュー・文/土屋恵介

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