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インタビュー

ニュー・シングル+トリビュート盤を一挙に解説(2)!



ROMANESQUE / Acid Black Cherry



インディー時代の『HURRY UP MODE』(87年)に収録の初期代表曲をセレクトしたのは、Janne Da Arcのヴォーカリストによるソロ・プロジェクト。唱法も含め歌メロは原曲を丁寧になぞっているが、キュアーを彷彿とさせるクリーンなギター・サウンドに大幅な改編が。重心の低いリフを主体に、メタリックにむせび泣いてはメランコリックに浮遊する重層的なアンサンブルが、加速するグルーヴに多彩な表情を与えている。



JUST ONE MORE KISS / BREAKERZ



最初のトリビュート盤『PARADE ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』では清春がカヴァーしたファースト・シングルに、お茶の間の人気者率いる3人組が挑戦。初期BUCK-TICKのロマンティシズムとポップネスが大きく表出したビート・ロック・チューンが、ドラマティックな歌謡ロックに変貌している。それでも失われない退廃的な空気から滲んでいるのは、オリジナルの持つ個性の強さと再編する側のリスペクト心。



MISTY ZONE / cali≠gari



88年のミニ・アルバム『ROMANESQUE』のオープニング曲と向き合ったのは、神出鬼没の活動を身上とする(?)4人組。楽曲の骨格と楽器陣の音作りにオリジナルへの敬意を込めながらも、どこかクレイジーな耳触りなのは、超絶テクのベーシストと個性派ギタリストの強烈なカラーゆえか。幻想と狂気が入り混じる冒頭の演出をはじめ、随所に細かい意匠/ミックス/エディットのおもしろさが。



Sid Vicious ON THE BEACH / POLYSICS



dip、L’Arc~en~Ciel、PUFFYと、ここ数か月で参加したトリビュート盤と同様、今井のヴォーカル曲を完全にオリジナル化したPOLYSICS。ファストでスポーティーなテクノ・ポップ+ガレージ版は、ザ・スターリン“ロマンチスト”の歌詞を引用した詞世界とも好相性。BUCK-TICKの持つ色気が見事なまでに粉砕されているが、その潔さが逆に気持ち良い。



氣志團 / MACHINE



櫻井と今井が共に〈転機だった〉と語る名盤『狂った太陽』から、日本屈指のエンターテイメント集団は“MACHINE”を選択。ニューウェイヴィーなギターを刺し色としつつ原曲に忠実なアレンジだが、キーを落とした綾小路翔のヴォーカリゼーションを筆頭に、抑えたテンションのままひた走るプレイは、彼らの硬派なダンディズムを浮き彫りにしている。



悪の華 / MERRY



初期の代表曲“悪の華”という大ネタをカヴァーしたのは、哀愁を帯びた歌謡性とソリッドなバンド・サウンドをもとに見世物小屋的な音世界を構築する5人組。原曲の構成を踏襲しながらも、全体にざらつきを与えたサウンドデザインには彼ら流のエッジが。ラストに向けて加速するビートのなかで、狂おしいほどの孤独感が浮上してくる。



JUPITER / MUCC



センシティヴなアコギの旋律とホーリーなコーラスワークに彩られた、星野英彦のペンによる初のシングル曲。TVCFにも起用され、多くのベスト盤にも収められたこの曲の持つエレガントなムードとスケール感を大事にしながら、“スピード”のギター・リフを忍ばせたりといった遊び心も忘れない。それはやんちゃなこの4人ならではの試みだろう。

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掲載: 2012年07月04日 18:01

更新: 2012年07月04日 18:01

文/土田真弓