BLOC PARTY 『Four』
バンド存続の危機を乗り越えて、絆を強めた4人が4枚目のアルバムで帰ってきた! 深みを増しつつロックに回帰した、2010年代のパーティーはまだこれからだ!
デビューから5年間に3枚のアルバムを発表して新世紀のUKロックの旗手へとスピーディーに成長を遂げながら、バンド内の人間関係に亀裂が入って活動を休止。その後はお互いから距離を置いていたブロック・パーティのメンバーが、久々に顔を合わせてバンド存続の可能性を探ったのは2010年末だったという。再始動に向けて主導的役割を果たしたラッセル・リサック(ギター)は、次のように振り返る。
「活動休止した直後の僕はダンス・ミュージックばかり聴いていて、リミックスの仕事をたくさん手掛けていたけど、アッシュのツアーに参加してギターを弾くことの楽しさを思い出したんだよね」。
さらにそれから半年を経てセッションを開始するまでは、どういう結果になるのか見当がつかなかったそうだが、それぞれが楽器を手にして音を出した瞬間に「マジックが起きた」とケリー・オケレケ(ヴォーカル)は微笑む。こんな風にケミストリーを確認し合った4人が、カムバック作『Four』ではエレクトロニックに傾倒した前作『Intimacy』から一転、彼ら特有のヒリっとするテンションを前面に押し出した生々しいロックンロールを志向したのは、自然な成り行きだったようだ。
「似たような作品を繰り返し作らないっていうのは僕らがずっと貫いてきたことだし、再出発するにあたって無駄を削ぎ落として、バンドのエッセンスを突き詰めたかったんだよ」(ケリー)。
そこで、ノイジーで厚い音色で知られるプロデューサー=アレックス・ニューポートを起用した4人、そもそもギター・ロックの表現に限界を感じてエレクトロニック路線に進んだわけだが、ブラーからスマッシング・パンプキンズまで若い頃に愛聴したバンドの魅力を再確認したことも、ロック回帰をインスパイアしたという。
「例えば最近の僕はニルヴァーナの『Bleach』やデフトーンズの『White Pony』を改めて聴きまくっていたんだけど、恐らくニューメタルが台頭してから、アグレッシヴで本能に訴えかけるギターというか、ある意味危険でダーティーな音が聴こえなくなった気がするんだ。そういう感覚を取り戻したかったのさ」(ケリー)。
また作詞を担当するケリーは、30代に突入して微妙な心境にあった時期に詞を綴ったといい、これまでと同様に自身の内面と自分を取り巻く世界に目を向けて、〈パーソナル〉と〈ポリティカル〉をミックス。
「去年30歳の誕生日を迎えた時、僕はNYで暮らしていたんだ。多くの時間を独りで過ごして、文章を書いたりあれこれ思索に耽ることができて興味深い時期だったうえに、1年を通じて、ロンドンでの暴動や〈アラブの春〉だとかさまざまな動きがあって、TVはパワフルなイメージを次々に突き付けてきた。僕は子供の頃から物事に疑問を投げかけるように教えられてきたから、そういう情報も当然詞に反映されたよ」。
そんなケリー、前作ではやや自分の嗜好を主張し過ぎてワンマンな動きがあったようだが、彼いわく「4人のパーソナリティーを同等に汲んだ作品を完成させること」にこだわった本作では、『Four』というタイトルと4つの同心円から成るジャケットが、対等な共同体としてのいまのブロック・パーティの在り方を象徴していると言えるのだろう。
「今回は常に全員がクリエイティヴな作業に関わっている状態を維持して、何か疑問を感じるたびにじっくり話をしたんだよ。だから、もしかしたら各自妥協した点はあるかもしれないけど、より大きな目標を優先したんだ。それに、バンドが消滅するか否かってことより4人の人間関係が失われていたら、もっと悲しかっただろうからね」。
▼ブロック・パーティの作品。
左から、2005年作『Silent Alarm』、2007年作『A Weekend In The City』、2008年作『Intimacy』(すべてWichita)
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2012年09月27日 14:45
更新: 2012年09月27日 14:45
ソース: bounce 347号(2012年8月25日発行)
インタヴュー・文/新谷洋子