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インタビュー

ティーネ

「トントン拍子に夢が叶ってしまいました!」

2009年の初来日に次いで、3年振りに日本を訪れたティーネ。子供の時分にトランペットを始め、瞬く間にその才能を開花させた若き才媛である。

「母がアマチュアでトランペットを吹いていて、この楽器が大好きだったんです。ノルウェーも日本と同様、吹奏楽活動がとても盛んな国なので、8歳でスクール・バンドに入って、その後にノルウェー歌劇場やオスロ・フィル首席の先生に師事しました。18歳でデビューしてからは、アンスネスさんも色々とサポートしてくれたんです」

プロとして歩み始めて6年。その活躍は著しく、彼女を巡る環境は激変した。

「確かにキャリアが回り始めたら、とても速かったです。演奏会とか受賞の他、国際的なマネジメント会社に所属したりと、トントン拍子に夢が叶ってしまいました。でも、謙虚にそれを受け止めなければと常に自分に言い聞かせています」

故国ノルウェーのSimaxレーベルで2つのソロと、ひとつの参加アルバムを制作し、この度EMIと契約を結んだ。EMIといえば、古くはモーリス・アンドレを擁し、また今ではアリソン・バルサムもいて、トランペットには伝統あるレーベルでもある。

「アンドレはやはりトランペット界のビッグ・スターですし、亡くなってしまった今では伝説のような方ですので、彼がいたレーベルの中に名を連ねるというのはとても光栄なことです。アリソンとは知り合いで人間的にもとても素敵で魅力のある方なので、同じレーベルでよかったねって話しているんですよ」

EMIデビューのアルバム・タイトルは『ストーリーテラー』。歌曲の声楽パートをアレンジなしで、そのまま演奏している(使用楽器はヤマハのシカゴ・モデル、マウスピースはバック)。

「歌詞なしでも物語が聴こえてくるような音楽を作りたいと思いました。小さな物語を持った曲を集めてあるのですが、一貫して何かしら関わってくるのは“愛”の存在です。音楽を通して皆さんの物語を展開していただければと思います」

収録作品には、有名曲と並んでホセ・マリア・カノの曲《月のエピローグ》も。

「ルネ・フレミングが好きで、彼女のアルバムで聴いた時から、いつか録音したいって思っていたんです(笑)」

近い将来には自分が中心となる音楽祭が実現するかも、と笑うティーネ。自然体で歩む彼女の前に、可能性はまだまだ広がっている。

©佐山順丸

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年08月28日 12:33

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 松本學(音楽批評)