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インタビュー

ボブ・ジェームス(フォープレイ)

FOURPLAYのリチュアル~FORE PLAY

結成からすでに20年、結成後から今に至まで、アーバンサウンドのトレンドセッターであり続けたフォープレイが、松田聖子をゲストに迎えた新作をリリースして話題を呼んでいる。はじめてフォープレイというバンド名を聞いた時、前戯のことかと勘違いしていた、ホットになるための、クールなリチュアル(儀式)のようなジャズサウンドをイメージしたバンドかと、勘違いしていた。

「長く続いた秘訣は、ちょっとしたリチュアル(儀式/ルール)を共有できるメンバーだからかな。何か判断しないといけないときは、いつも全員一致の結論がでるまで議論してきたよ。ときにはくじ引きしたりしてね。アルバムの一曲目となった《ディセンバー・ドリーム》(チャック・ローブ作曲)は、まさにそうやって出来た曲だ。もともとはフォープレイの『四季』、ヴィヴァルディのような四季をテーマにしたアルバムを構想していたときに、誰がどのシーズンをやるか、くじで決めた。チャックが冬で、確か僕は秋だった」。秋をテーマにしたボブの新曲と聞いただけで、秋雨に濡れるアスファルトの、しっとりしたニューヨークが思い浮かぶ。『アンジェラ』や『タッチダウン』のラグジュアリーなサウンドが懐かしい。「そうだね。そもそも僕はオーケストレイターとして仕事をしてきたんだ。あの当時は設計師のように大きなテーブルに向かって、毎日スコアを書いていたよ。そういえば、日本のオーケストラとフォープレイが演奏した時の模様を収録したDVDがリリースされる。とても楽しかったよ」。

ボブは、ジョビンのオーケストレイターであるクラウス・オガーマンと並び称されるような、フェンダーローズの甘い音を生かしたオーケストレーションの素晴らしいアイデアをいくつも生み出してきた。「そうだね、最近はずーっとヤマハのMOTIFばかり使っていたけど、またフェンダーローズで演奏し始めたんだ。昔の記憶がいっぱい蘇ってきたよ」。フォープレイというミニマムなアンサンブルのサウンド設計の妙に感嘆しつつ、いつかそこに70年代のフュージョンを席巻した彼のビッグなサウンドの復活を夢見る往年のファンもたくさんいる。それぞれのアイデアを吟味することをバンドメンバーが楽しむという習慣が定着したのも、毎回、メンバーがわくわくするような議題が持ち上がるからだろう。「そう、今回は、聖子の参加はとてもフレッシュだったよ。もちろん、彼女にも議論に参加してもらったよ」。 松田聖子で、うっとりしたところで、アルバムは終わる。やはりこれは前戯、なのか!?

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年10月25日 19:03

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 高見一樹