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インタビュー

三浦一馬


最高峰マルコーニ作品で挑む、バンドネオンの未来像

メカ好き少年がこのドイツ生まれの楽器に魅せられたのは、音色以上に視覚的効果……テレビ画面に映る、伸び縮みする蛇腹とボタン列だった。18歳でメジャー・デビュー。弱冠22歳にしてソリスト道を突き進む彼が、果敢に探究し続けてきた命題は、バンドネオンのもつ新たな可能性だ。最新3作目の柱は、5年間も練習を重ね機が熟すのを待った、恩師の手になる室内楽作品。

「2007年の夏、出来たての楽譜を、マルコーニさんが音源と一緒にくださった。《カーメラタンゴス》が演奏されたのは、母国アルゼンチンでもカメラータ・バリローチェの40周年記念公演だけ。今回が初めてのオフィシャル録音です。まず今まで、バンドネオンにこういう曲はありませんでした。クラシックへの造詣が深く、タンゴのエッセンスが根底にある。ピアソラにもコンチェルト作品はありますが、ピアソラの形はオーケストラ編成でも、辿っていくと原点はキンテートなどの音楽で、その拡大版のようなところがあると、個人的に感じます。でもこの作品は、バンドネオンがアンサンブル楽器、ソロ楽器として完成され、最大限に活かされていて、ある種マルコーニ作品のひとつのまとめ、集大成のように感じるんです」

かくも熱く語りたくなるほど、師匠のこの作品に、彼は大きな魅力と予兆を嗅ぎ取ったらしい。

「魅力的で、そのぶん難しさもあります。でもこれは、絶対に世に出していかなきゃいけない曲だと思いました。今後の、僕の進むべき方向を示してくれているようなところがあって……ソロ、デュオに始まり、キンテートをやって、今回の室内楽。将来的には、オーケストラとの共演も視野に入れてやっていきたいと思っていましたから、僕にとってやっぱり自然な流れなんですね」

これまで、ピアソラやニーノ・ロータ作品で共演した室内楽の名手らが、「バンドネオンをタンゴの楽器という枠に留めてしまうのはもったいない」と痛感する彼を、心強く支えてくれたという。

そして予告どおり、遂に実現する日本での師弟競演。CDや映像で憧れ、直々にレッスンを仰いだ、大物ネストル・マルコーニとの公演『バンドネオン・ヒーローズ』。目玉は、三浦ソロでマルコーニ指揮《カーメラタンゴス》、マルコーニ・ソロによるピアソラ曲《バンドネオン・コンチェルト》だとか。超絶技巧に溢れる色香、ヨーヨー・マのピアソラ作品にも参加した最高峰の巨匠が、最強師弟コンビで、バンドネオンの未来像に挑む。

LIVE  INFORMATION
『師弟共演!ネストル・マルコーニ×三浦一馬
“バンドネオン・ヒーローズ”』

○12/11(火)紀尾井ホール
○12(水)兵庫県立芸術文化センター【完売】
○13(木)アートピアホール(名古屋)

ミニライブ&サイン会
12/15(土) 13:00~タワーレコード渋谷店7F

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年12月11日 11:40

ソース: intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)

取材・文 佐藤由美

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