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インタビュー

藤本一馬

アギーレらと対話するように作り上げたソロ2作目

オレンジペコーのギタリスト兼コンポーザーである藤本一馬が、二作目のソロ・アルバムを発表する。一年半前の一作目は、本人のギターにベースとドラムを加えたトリオ編成で、いわゆるバンド・サウンドだった。だが、今回は『Dialogues』というタイトルの通り、静かに会話を楽しむような室内楽スタイルの作品に仕上がっている。「最初は前回と同じ編成で作ろうと考えていたんですが、次第にいろんな人と共演したいなと思い始めたんです。ちょうどアーティストの来日や、新しいミュージシャンとライヴを始めたことも重なり、自然に方向性が固まりました」。

まず注目したいのは、アルゼンチンの鬼才カルロス・アギーレのピアノと対話した2曲。トミ・レブレロとの交流から本格的にアルゼンチン音楽に興味を持ったというから、ここ一年くらいのことなのに、気が付けば国境を越えた共演が実現。偶然や運命も形にしてしまう藤本の吸引力の賜物だ。「一日はリハーサル、もう一日をレコーディングのつもりでスケジュールを取っていたんです。でも、音を出し始めたらすぐに〈これはもういけたな〉って直感して、一気にテンションを上げて録音しました。だからあれはほとんどテイク1」。

また、ブラジルの夫婦デュオ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートとの共演曲では、彼らに歌詞を書き下ろしてもらい、オレンジペコー以外ではめったにない歌モノとして成立させた。「とくに何も伝えずに、歌詞をお願いしたんです。彼らはスピリチュアルなことに興味を持っているし、そのライフスタイルにも共感できる。だからいいものになるとは思っていたけれど、予想以上に素晴らしい歌詞を書いてくれました」。

加えて、日本からはここ半年くらいライヴでもしばし共演しているバンドネオン奏者の北村聡を迎え、彼のオリジナル曲の他、前作に収められていた《空のように》の再演にもトライ。そして、すべてを総括するかのように、少しオリエンタルな雰囲気を持つオープン・チューニングのギター・ソロで、この音の対話集は幕を閉じる。「最後の曲は故郷のイメージで作り始めたんですけど、だんだん日本人である自分ということから飛躍して〈地球の一員でしかないなあ〉と考えていたら、スケールの大きな曲になりました」。
ライヴでは、これらの楽曲を違う楽器編成で演奏することもあるそうだ。きっとまたそこから新しい対話が生まれ、育まれていくことだろう。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年01月28日 11:55

ソース: intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)

取材・文 栗本斉(旅とリズム)