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インタビュー

MOONBUG 『REMIX ASSAULT』

 

ウェブ・メディアを通じて数々の〈神トラック〉を送り出してきたユニットが、邦楽ポップ/ロックの素材を縦横無尽に調理した初のオフィシャル・リミックス盤!

 

 

SoundCloudやYouTube、ニコニコ動画といったウェブ・メディアを通じて既存の楽曲をマッシュアップ/リミックス──そんなスタイルで作品を拡散させていくプロデューサーたちは日本国内にも数多く存在するが、そのなかでも抜きん出た存在感を発揮しているユニットがMOONBUGだ。作品を投下するたびに絶大なバズを引き起こしているこのユニットが誕生するきっかけとなったのは、中心人物のNovoiskiが制作したcapsule、ダフト・パンク、ビースティ・ボーイズのマッシュアップ“Starry Sky YEAH! Remix”だった。

「ビースティがサイトでアカペラを配布していたことがあって、自分の作った曲に彼らのラップを乗せることができるなんて、こんな素敵なことはないなと。さらにcapsuleも混ぜたらおもしろいんちゃうかな……くらいの軽い気持ちで作ったんです」(Novoiski)。

そんなノリで公開された“Starry Sky YEAH! Remix”は100万単位の再生回数を叩き出すなど、当人の思惑を遥かに超える広がりを獲得することに。これを受けてユニットとして活動するべく、かねてから付き合いのあったNylonizmとHisataakaaを招聘。基盤を整えた彼らは2010年にオリジナル・アルバム『BEATS & SPIKES』を発表し、さらには日本におけるクラブDJ/ダブ・エンジニアのパイオニアであるDUB MASTER Xが加入するという驚きの展開も見せながら活動領域をグイグイ広げてきた。そして今回、満を持してリリースするのが公式リミックス・アルバム『REMIX ASSAULT』だ。取り上げているのはユニコーン、木村カエラ、m-flo、スーパーカー、the HIATUS、ストレイテナー、Base Ball Bearなどなど豪華なアーティストばかり。各人の代表的なナンバーを、ロック的な昂揚感を煽るアッパーなダンス・ミュージックへと変換している。

「僕は基本的にロックが好きですし、MOONBUGみたいな打ち込みの音楽をやるにあたっていちばん影響を受けたのはプロディジーなんです。そういう90年代のダンス・ミュージックはすごく意識してますね。特にアッパーにしようと思ってるわけではないんですけど、欲張りなんで、あれもやりたいこれもやりたいって詰め込んでいくとこういう音になるんですかね」(Novoiski)。

基本的にNovoiskiがイニシアティヴを執って制作し、「それをHisataakaaがエディットして、さらにそれを再構築して……」(Novoiski)という流れ。Hisataakaaは、ヒップホップに造詣の深いプロデューサー。彼の繰り出すオールドスクール・エレクトロのビートや切れ味鋭いエディットが、楽曲にファンキーな色艶を与えている。

「MOONBUGのマッシュアップを聴くと、80年代に出てたブートレグのエディットものを強烈に思い出すんですよ。そういう意味で、エディットものといまのマッシュアップは自分のなかで繋がってる。ロックっぽいNovoiskiの曲に自分の持っているヒップホップ的な要素を入れるのはおもしろいし、違う者同士だからいっしょにやる意味があるかなと」(Hisataakaa)。

90年代のロック寄りのダンス・アクトや古今東西のヒップホップ〜ブレイクビーツ──そういったエッセンスを混ぜ込む一方で、エレクトロやダブステップに通じるモダンで骨太な鳴りを備えていることも、本作の魅力であり重要なポイントだろう。

「僕はどんどん音を詰め込んじゃうし、ダンス・ミュージックの様式を考えないで作っちゃうんで、そのままだとフロアでしっかり響かないんです。でも、DUB MASTER Xさんのエンジニアリングが、そういう問題をすべて解消してくれて」(Novoiski)。

「もともとDUBさんに〈音質的に限界があるよね〉って指摘されたりもしていて、〈そんならやってくださいよ〉って加入してもらったんです。釣るような感じで(笑)。やっぱりダンス・ミュージックだから、曲云々の前にいまの鳴りを意識することが大事やし、そこはDUBさんの技が発揮されてるんやと思いますね」(Hisataakaa)。

 

▼MOONBUGが参加したリミックス作品を紹介。

左から、2009年作『LOVE SQ』(ソニー)、2011年作『キラキラジブリ -Returns-』(ハピネット)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年03月19日 15:30

更新: 2013年03月19日 15:30

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔

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