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インタビュー

HER NAME IN BLOOD 『THE BEAST EP』





着実に熱気を高めている日本のラウド・ロック・シーン。大型のロック・フェスにはメタル/ハードコアを通過したヘヴィーなバンドがあたりまえのようにラインナップされているし、うら若き女子までもが轟音に身を任せてモッシュやダイヴをする光景は、いまやライヴハウスの日常である。そして、そんなシーンにおいて圧倒的なパフォーマンスで頭ひとつ抜きん出ているバンドが、HER NAME IN BLOODだ。メンバーは、平均25歳。バンドのスタートは20歳前後の頃となるが、彼らの音楽がハードなサウンドへと着地したのは、メンバーのバックグラウンドを鑑みれば深く頷ける。

「僕はメタル一筋でしたね。小学生の頃に親父から〈これ聴け!〉ってメタリカのCDを渡されたのがきっかけです。小5の時には〈パンテラ最高!〉って言ってました(笑)」(Daiki)。

作曲の舵を取るDaikiはメタルの英才教育を受け、TJとUmeboはスリップノットやリンキン・パークといった2000年代のUSラウド・ロックに、MakotoはFAT WRECK CHORDS系のパンク・ロックに青春を捧げてきた。そしていま、衝撃的だったファースト・アルバム『DECADANCE』を遥かに上回るスケールと完成度を持った新作『THE BEAST EP』を完成させた。

「最強!──そう自信を持って出せる作品だと思います。こんなバンドがいたらカッコイイだろうなあって思うことが、自分らで表現できたと思いますね」(Daiki)。

練り上げられた楽曲は、一旦アメリカへと渡り、スーサイド・サイレンスやシャドウズ・フォールなどを手掛けてきたウィル・パットニーの手によってミックス/マスタリングが施された。

「最終的に、すごくメタルになったなと思います。メンバー・チェンジもあったので、曲作りの方法を一度リセットした結果、インパクトのある部分が残りました。曲の輪郭がハッキリしたから、聴かせどころと曲の山場がわかりやすくなったと思います。キャッチーだし、エグい」(Makoto)。

〈野獣〉というタイトルの通り、猛進する獣のごとき勢いを感じさせる全6曲のなかで、作品のキーとなったのは1曲目に置かれた“UNSHAKEN FIRE”だと言う。

「“UNSHAKEN FIRE”のデモを聴いたとき、メタルで熱い曲だなって思ったんです。〈赤〉や〈炎〉というイメージが湧いてきたので、〈自分のなかにある炎を燃やせ〉っていうストレートでポジティヴなものを書いてみました。今回の作品には〈怒り〉もあるけど、6曲すべてにポジティヴなメッセージがあると思います」(Ikepy)。

昨年のカヴァー・コンピ『PUNK GOES POP Vol.4』にレディ・ガガ“Poker Face”で参加しているものの、彼らは2009年のファースト・アルバムから3年間、フィジカルでのリリースがまったくなかった。そのあいだには、さまざまな海外アーティストとの共演、初の海外ツアー、レーベル移籍などバンドを取り巻く環境の変化があり、同世代バンドの活躍や、ラウド・ロック・シーンの急速な拡大に焦りや葛藤もあったようだ。『THE BEAST EP』は、ひょっとすると彼らが自分自身へ向けたメッセージなのかもしれない。そして、そういった苦悩を乗り越えて作品を完成させたことで、真の快進撃──その準備も整ったはずだ。



PROFILE/HER NAME IN BLOOD


Ikepy(ヴォーカル)、Daiki(ギター)、TJ(ギター)、Makoto(ベース)、Umebo(ドラムス)から成る5人組。2003年に前身となるバンドを結成し、2007年にHER NAME IN BLOODとして活動をスタート。ハードコア/メタル系のフェス〈Punm Up The Volume FEST〉をはじめとする数々のステージで注目を集め、2010年2月に初の単独音源となるシングル“Confusion”を、同年3月にファースト・アルバム『DECADENCE』を発表する。その後も国内外問わず数多くのバンドと共演。このたび、デビル・ウェアーズ・プラダやアスキング・アレキサンドリアらを擁するメタル/スクリーモ系レーベルから初の日本人アーティストとしてEP『THE BEAST EP』(TRIPLE VISION)をリリースした。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年04月08日 19:50

更新: 2013年04月19日 12:30

ソース: bounce 353号(2013年3月25日発行)

インタヴュー・文/MAY-E