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インタビュー

レイト 『君を愛す』



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[ interview ]

生きるうえで目を伏せたいことや、それにまつわる心の暗部に引き寄せられるようにして曲を紡いだファースト・アルバム『明日など来るな』――この作品でシーンに登場したラッパー、レイト。家庭内の暴力や学校でのいじめに始まり、自己嫌悪や死を通した視線にまで至るそこでの描写は、曲としてのストーリーを超えて生々しい事象とリンクし、隠れがちな現実を映す鏡とさえなり得た。

しかし、レイトの本意はそこになかった。EP『さよなら昨日』や狐火との共作盤『世界の果て』などを挿んで実に約5年ぶりのセカンド・アルバム『君を愛す』は、前作の影を振り払わんと制作に向かった一枚。完成までの生みの苦しみは曲に窺える生の苦しさとダブるが、しかしその内容は生きることに光を見い出し、リスナーにも手を差し伸べるものとなっている。今回、レイトにはその新作についてはもちろん、これまでのプロフィールも含めて話を訊いた。



音楽をやればもうちょっと友達出来るんじゃね?



――ご両親は共に美大出身だそうですね。

「2人共ちょっと変わった人なんです。お母さんは英語も喋れる人で、お父さんを〈ダッド(Dad)〉って呼ぶようにしつけられて(笑)。金沢の外国人コミュニティーとすごく仲が良くて、オハイオ出身のカントリー好きな人が家にいたりして。そういうのに憧れがあったんだと思います」

――過去作のジャケットはご自身で描かれてますけど、ご両親も絵を描いたりされてたんですか?

「そうですね。僕も小さい頃は絵ばっかり描いてました。幼稚園に入ると、他の子たちはバーッて走り回ってるから〈何だここは?〉と思ったりして。いまでも癖みたいな感じで、スタジオでもレコーディングの合間にずっと描いてます」

――音楽との結び付きも小さいころからあったんですか?

「小学生の頃にプロレスのサントラから入りました。家で流れてたブラック・ミュージックはジャネット・ジャクソンぐらいで。デ・ラ・ソウルとかが入ったトミー・ボーイのビデオ・コンピがなぜか家にあったので、たぶん最初に触れたラップはそこだと思います」

――曲を書くようになったきっかけは?

「中学生くらいの頃に、〈MTV Video Music Award〉で観たエミネムにすごいハマって、いちばん最初にお年玉でCDを買ったのがエミネムの『The Slim Shady LP』とサイプレス・ヒルの『Black Sunday』。その時点でラップをやってみようと思って、英語で歌詞を書きはじめました。絵を描く感覚で曲も出来るんじゃね?っていうのは、音楽をやる前からちょっと気付いてたし、音楽をやればもうちょっと友達出来るんじゃね?みたいに思ってたのも始めたきっかけのひとつでした」

――日本語ラップからの影響はありましたか?

「最初はカラオケでエミネムばっかり練習していて、そのうち小節も全然数えずにリリックっぽい感じでまとめるようになりました。(日本語ラップは)別に嫌いだったわけじゃないんですけど、自分でやるようになって初めてちゃんと聴くようになって」

――じゃあ影響を受けようがなかったわけですね。リスナーとしてはロックなども聴いてたそうですが。

「みんなでスタジオに集まってグリーン・デイとかビートルズ、ホワイト・ストライプス、ゼブラヘッドあたりのカヴァーをバンドでやったりしてました。ロックもそのへんは普通にCD買って聴いてたし、クレモンティーヌとか、あとモーツァルトが好きだったり。最近はラテンやサルサを聴いてますね。もともと自分が好きだったサイプレス・ヒルとかがサンプリングしてるのがそこだったりするんで違和感なく聴けるし、聴いててすごい気分良くなるんで。まあ、それはあんまり自分の音楽に直結してないんですけど」


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掲載: 2013年04月24日 18:00

更新: 2013年04月24日 18:00

インタヴュー・文/一ノ木裕之