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インタビュー

INTERVIEW(4)――聴く人にもっと近付いてもらうための一枚



聴く人にもっと近付いてもらうための一枚



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――ラップについて今回意識したことなどはありましたか?

「前回はすごい高音で声を出すことに意識的でした。アニメで言ったら『シンプソンズ』とか『ちびまる子ちゃん』のキャラってみんな似たような感じですよね。それと同じで、前回は声を全部似たような感じで出してたんですけど、今回はナチュラルな声を意識してみました」

――だとすると、『明日など来るな』は表現すべてにおいてデフォルメした作品だったと言って良さそうですね。逆に今回の『君を愛す』はそうした要素を削ぎ落として自分に近付けていく作業から生まれたアルバムだと。

「最初からデフォルメしすぎると描けない部分、見えてない部分がやっぱすごく多いなと思いますね。まあそういうのも好きなので今後もそうしないってことはないと思いますけど、ただノリで……っていうんじゃなく、ちゃんと意図があったうえでやるって感じで」

――それぞれの曲とご自身の経験はどのようにリンクしてるんでしょうか?

「例えば、“連鎖”はちょうどその時付き合ってた彼女が問題を抱えていて、助けたいなって部分もあるんだけど、好きだから助けたいのか、かわいそうだから助けたいのかわからなくなって、そういう思いを自覚して納得いくものにするまでに時間がかかりました。“黒い春”にしても、アルバイトしながら歌手をめざしてた彼女のことを歌っています。逆に“それを愛す”は自分の気持ちをそのまま言った曲。“少年R”は実際に僕がバスケ部にいた時に思っていた気持ちと、音楽を続けられないなって時の気持ちをダブらせて歌っていて、“最強な俺”ではバイトとかをやってて常に感じる辛さを出したくて書きました。“夜行線”は普段から感じてることをそのまま書いていて、前向きなんですけど、ちょっと無理やり〈がんばろう〉みたいな感じ。“野獣”“いかれたひと”はまさに自分のこと。“いかれたひと”のトラックはいままでやったことがない手法で、自分で弾いたアコースティック・ギターをサンプリングして作っています。そこで発見や覚えたこともありましたね。“真夜中の王国”は手法的に前のアルバムにいちばん近いかもしれない。“荊棘の園”も“連鎖”で歌った別れた彼女のことを違う形で歌った、いままでにないタイプの曲なので作れて良かったです。“君を愛す”は最後の最後までどう伝えようか悩みました。本当に死にたいと思っている人にはどう受け止められるか、逆に傷付けるんじゃないかと怖かったですが、誤魔化さずに気持ちを書いた曲ですね」

“少年R” 試聴

――自身の負の感情やネガティヴな状況をさらけ出して歌う“それを愛す”のような曲の存在を含めて、『君を愛す』っていうタイトルの〈君〉にはレイトさん自身もダブってきます。引いてはみずからを肯定する、っていう意味も込めていますか?

「そういう部分はもちろんあるけど、最終的には聴いた人が救われるような、パッと聴いた印象がちょっとダークでも嫌な気分にならないもの、っていう気持ちから出てきた言葉ですね」

――『君を愛す』の〈君〉は文字通り本作を聴く人たちということですね。

「今回は自分じゃない人を思って書いた曲もあるし、結構前向きな曲を作れるようになりました。自分が現実で抱えてきたものも全部入ってるんで、聴く人にもっと近付いてもらうための一枚でもあります。曲のヴァリエーションも豊かになったんで、リリックをあんまり聴かない人でも楽しめる内容だと思うし、リリックだけ見てもちゃんと楽しめるものになっているのではないかと思います」

“君を愛す” 試聴



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年04月24日 18:00

更新: 2013年04月24日 18:00

インタヴュー・文/一ノ木裕之