インタビュー

パスピエ feat. 泉まくら “最終電車(FragmentとパスピエのREMIX)”

 

最終電車のあとに、まっくらな夜がやってくる

 

 

待望のニュー・アルバム『演出家出演』が6月12日にリリースされることとなったパスピエ。3月に登場した先行シングル“フィーバー”でグッと広がった音楽性の幅がどのように開花しているのかも気になるところだが、彼らはそこまでの期間を単に待たせるようなことはしない。新作リリースに先駆けた5月に“最終電車”がタワーレコード限定でシングル・カットされることになったのだ。

「去年『ONOMIMONO』をリリースした時に、やはりリード曲を決めなくてはならないので、その時は悩んだ結果“トロイメライ”を選んだんですが、他の曲たちももっと知られるようにしたいと思っていました。その意図を形にしていくうえで、かつリスナーの人がもっとも新鮮な気持ちで聴けるのがリミックスであって、それが実現した、という感じですね」(成田ハネダ)。

リミックスにフィーチャーされているのは泉まくら。Fragment主宰の術ノ穴から昨年リリースした『卒業と、それまでのうとうと』が高い評価を得た福岡のラッパーだ。今年に入ってからは、“このきもち”をFragmentの最新作『感覚として。+ササクレ』で披露していたのも記憶に新しいが、今回のリミックスでトラックメイクを担当したのもFragment。その雰囲気は、さながら大胡田なつきがまくらの世界にさらわれたようでもある。「同世代のおもしろいことやってる人に頼みたくて」(成田)という理由からのオファーに、「よっしゃー!という感じです。パスピエさんとの共作は目標のひとつだったので。もう、断る理由がなかったです」(泉まくら)という二つ返事で実現に至った共演は、結果的に大胡田の歌も再録するという凝った作りに。

「良かったです、ほんと。『ONOMIMONO』では敷き詰めることの妙を求めていたのですが、それが隙間の妙に変わっていて。素材の受け取り方で作品が180度変わったので、びっくりしました」(成田)。

「まくらさんの歌を聴きながら歌を録音したんですが、言葉が出すリズムがとても心地良かったので、わたしもこの“最終電車”からラップを練習してみようかと」(大胡田)。

 


パスピエ “最終電車 featuring 泉まくら(FragmentのREMIX)”ジャケット画像

 

そしてジャケでも、泉まくらのアートワークやMVを手掛けた映像作家・大島智子と大胡田がコラボする格好に。

「わたし、大島さんの絵好きなのでうれしかったです。今回いっしょに描いていただいたジャケットの絵は、指先が特に好き。表情ですとか線ですとか、表現をふたりぶん、ひとつの場所で形にできたと思います」(大胡田)。

「わたしたちの年代の、特別な〈今〉が出来たようで、楽しかったです。大胡田さんが起こしてくださったラフに、まくらさんのジャケットのような女の子が描かれていて、嬉しかったです」(大島智子)。

そして、さらなるリミックスを担当したのはOMSBだ。『Mr. "All Bad" Jordan』で知られる彼はパスピエ主催イヴェント〈印象A〉でもオープニングDJを担当していた。

「自分とはまったく正反対な音楽だと思ったのでオファーには驚きました。でもシンプルにカッコいいと思ったので受けさせてもらいました」(OMSB)。

「いちばん作品をいい意味でぶっ壊してくれると期待してお願いしました。そしたら期待以上にぶっ壊してくれました(笑)」(成田)。

ニュー・アルバムの登場はもう少し先。それまではこの意欲的なコラボを楽しんでおこう!

 

▼パスピエの近作を紹介。

左から、2012年作『ONOMIMONO』、2013年発表のシングル“フィーバー”(共にunBORDE)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年05月15日 00:00

更新: 2013年05月15日 00:00

ソース: bounce 354号(2013年4月25日発行)

構成・文/出嶌孝次

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