インタビュー

Budamunk×Takumi Kaneko×mimismooth 『First Jam Magic』



タイトに刻まれるビート、スムースに漂うローズ、ジャジーに浮かぶヴォーカル——3つのヴァイブが溶け合ったジャムは、深い時間に流れる魔法なのか、あるいは……



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興味深いブッキングを実現してくれるイヴェント〈Hennessy artistry〉の名物企画〈SECRET SESSION〉。国内外問わずさまざまなアーティストが即興のジャム・セッションを披露するこの企画での邂逅が、BudaMunk、金子巧(cro-magnon)、シンガーのmimismoothによって一枚のアルバムへと発展した。

「本当に〈Hennessy artistry〉でのセッションが始まりで、それが良かったんで、そのノリのまま作っちゃったんですよ。巧さんは本当にワンテイクでした。フリースタイルで適当に弾いたものの良い部分を切り抜いてそれをサンプリングみたいな感じで組み直してほしいって言われていたんですけど、俺はもっとこう、ライヴっぽく、頭からケツまで弾いてもらって、それをそのまま使うっていうのをやりたかったんで」(BudaMunk)。

今回リリースの『First Jam Magic』は、その経緯やタイトルからもわかる通り、ジャム・セッションを真空パックしたような形になっていて、空気感や鮮度を保つためにとても短時間で制作されている。ドラマー兼全体のプロデュースを手掛けたBudaMunkの狙いである、作り込んだクォリティーよりもフレッシュさや直感的なノリに重きを置いたその結果には3者が揃って納得していて、何よりアルバム全体を通して聴くことにより、方法論としての成功は顕著にリスナーにも伝わるだろう。

「すべてのOKの判断をBudaに任せちゃったからね。そうすることで統一したカラーを出したかったし、今回はそのコンセプトに乗ることが楽しかった。作品として作り込むのはみんなやるじゃないですか? そうじゃないのに、作品としてまとまって聴けるっていう経験はいままでなかったから。そのコンセプトでいこうとか、そういうことを決めることが本当に大事であって、そのへんはBudaのプロデュース力ですよ」(金子巧)。

「ライヴでMPCを叩くっていうこと自体が初めてのことだったので、本当にチャレンジだったんですけど、いい経験でしたね。そのコンセプトに沿うように俺も何曲かはドラムをループしないで頭からケツまでライヴでワンテイクで録ってます。なかには途中まではループで、途中から生で叩いてる曲もあるし」(BudaMunk)。

ライヴ盤/セッション盤に近い本作は、一発録りならではの張り詰めた緊張感が当然あり、矛盾するようだが、このメンツゆえの緩さも同時に存在する。その両者は本来はライヴだからこそ感じ取ることのできる感覚だ。

「この前のライヴの時は今回の3人に元犬式の石黒(祥司)さん、仙人掌が参加してくれて5人編成だったんですけど、石黒さんが参加してくれるのであればバンドという形態でもいいし……流動的な感じで続けていこうと思っています」(BudaMunk)。

こういった企画盤自体決してリリースが多いわけではないし、ことさら、ヒップホップ/R&Bという範囲に限定すると、あまり前例のない貴重な盤だと思う。今後のセッションを楽しみに待ちつつ、まずは本作を作品/体験として楽しむことをオススメする。



▼関連盤を紹介。

左から、BudaMunkの2012年作『Butter Session Mixtape』、cro-magnonの2012年作『Live at Motion Blue yokohama』(共にJazzy Sport)、BudaMunkの2011年作『Blunted Monkey Fist』(King Tone)

 

▼『First Jam Magic』に参加したゲストの作品。

左から、mabanuaの2012年作『only the facts』(origami)、仙人掌が在籍するMONJUの2008年作『Black de.ep』(DOGEAR)、元晴が在籍する(仮)ALBATRUSの2011年作『ALBATRUS』(Jazzy Sport)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年06月20日 20:45

更新: 2013年06月20日 20:45

ソース: bounce 355号(2013年5月25日発行)

インタヴュー・文/橋本“Mista Donut”修

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