INTERVIEW(2)―“星の狂想曲”は僕の作品のなかでもすごく珍しい
“星の狂想曲”は僕の作品のなかでもすごく珍しい
―ここからは楽曲について伺います。 “愛しのヴァルキュリア”は女性への賛歌のように感じました。モチーフになった女性像はありますか?
「普段から、渋谷のスクランブル交差点や、混んでいる地下鉄で耳にイヤホンをして、スマホや携帯を片手に仕事や学校に向う女性をたくさん見かけるんです。そんな姿を見ていると、仕事や恋に傷つきながらも<毎日戦っているかもしれないな>と感じて」
―なるほど。これを聴いた女性の皆さんは嬉しくなりますね。<また頑張ろう!>って気持ちになると思います。
「そう思って頂けたら嬉しいですね」
―そしてリードトラックの“星の狂想曲”は、狂おしくも切ない男女の恋路が描かれていますね。
「相反するものが好きなんです。この曲はそれを象徴していて、アレンジも静と動が混然としています。これは不実な男女間の恋を歌っている話ですが、そこには純粋な愛だったり、求めているものがあると思うんですよね。傍からみるとそれは憎らしい行為にも見えるかもしれないし、たしかにこの主人公は悪い女性なのかもしれませんが、その男性と過ごした時間は真実だったんだと思う。そういう混沌としたものを伝えたくて、Music Clipの映像でも激しいシーンと静かなシーン、黒いシーンと白いシーン、相反するものをごちゃまぜにすることで混沌感を出してみました。僕の作品のなかでもすごく珍しいと思います」
―今回、動物に例えたタイトルも多いですね。
「そうですね。これは動物を擬人化してるんです。あえて動物に例えることでストーリーが膨らんで、イメージがわきやすいというか。“黒猫のTango”にしても、これを○○の女のTangoってしてしまうとイメージが広がらないんです。世界観を深めるために動物に例えるのが好きなのかもしれない」
―“黒猫のTango”は猫のような小悪魔な女性が描かれていますね。
「黒猫だったら可愛い感じもしますし、憎めない感じも表現できますからね。そして“LION”も、眠れる獅子っていう言葉をモチーフにしています。弱いライオン(自分自身)も本当は強くなれるのではないかと問いかけています」
―アルバムのなかでもひときわ切なさを放つ “桜雨”ですが、モチーフにされたものはありますか?
「僕には家族写真が1枚しかないのですが、それをモチーフに生まれてきた曲です。自分の人生にとって桜はとても印象深いものなので、桜を見ると〈あぁ、切ないな〉と思ったときもあるし、華やかで〈楽しいな〉って思った時もある。キレイに咲いてる桜の周りで、みんな楽しそうにしているのに〈なんで自分だけ〉と羨んだ時もあります。桜って見る人の心境によって変わると思うんです。それに桜って、散るけれどまた来年も必ず咲くじゃないですか。家族間とか色んな人との付き合いで上手くいかなかったことも、来年の春に桜が咲くようにいつかまた巡り合って良くなればいいなと。<家族の絆の永遠性>というものを信じたいっていう気持ちが僕の心のなかにあったのかもしれません」
―通常盤にはボーナストラックとして“星の王子さま”が収録されていますね。この曲を選んだ理由は?
「そもそも自分のなかでは11曲で完成していたんです。ただ、ボーナストラックとして全く違う楽曲をいれたら面白いなと思っていました。自分が歌い始めて、一番最初に出来た曲が“星の王子さま”なので、今回の作品が自分の色んな人生を切り取った集大成だとしたら、はじまりの大切な1曲として、僕の原点と言える曲を選びました」
―星をキーワードとする楽曲や作品が多いですが、AKIHIDEさん自身、星に対する特別な想いがあるのでしょうか。
「単純に星が好きというのもあるんですが、星はどんな場所からも見えますよね。みんなで共有できる話題でもあるし、見上げれば場所は違えど空は繋がっている……そういう意味でも、星は自分と誰かを繋ぐ大切なモノです」