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インタビュー

LONG REVIEW――THE CHERRY COKE$ 『COLOURS』



エネルギッシュな情熱と意志が詰まった作品



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バンド史上もっともラウドで攻撃的な作品だった『BLACK REVENGE』と比べると、ラウド率はやや低め。その代わりに豊かなメロディーが前面に押し出され、全体のトーンは明るく、もともと彼らが持っていたハッピーでファンな音の感覚が全編に渡って楽しめる。前作をややハードに感じた長年のリスナーは大喜びだろうし、そこで彼らを知った人は〈こんなにポップな歌も歌うんだ〉と新鮮に感じるはず。前作が〈BLACK〉で今回が〈COLOURS〉というのも実に巧い表現で、〈何色にもなれるんだぜ〉という自信に溢れた彼らの笑顔が、音の向こうから見えてくるようだ。

勇猛果敢なヴァイキング・メタルと、哀愁と熱血のアイリッシュ・トラッドなメロディーを掛け合せた1曲目“DRUNKEN PIRATES ~終わりなき夜の果て~”をはじめ、翳りあるメロディーにどことなく昭和の歌謡曲を感じる“Who killed the RED?”や高速のダンス・ビートで突っ走る“SLY HIGH”など、飛び上がって盛り上がれるダークでカッコイイ系の曲も、もちろんある。だが、大半を占めるのは陽性のアイリッシュ・パンクなナンバーで、TOMOのキュートな声と野郎どもの男臭い叫びの対比が楽しい“PALE YELL”、HIROMITSUがリードを取る陽性のロックンロール“misery-go-round”、KAT$UOが優しく大らかに歌う“SHINING STAR”など、後味の爽やかな曲ばかり。極めつけは思い切りポップなサマー・チューン“BITTERSWEET SUMMER DAYS”や“GLORY STORY”“JOURNEY TO THE SUNLIGHT”などで、サビのメロディーのわかりやすさといったら、たとえば初期のサザンオールスターズを思い出すほどに、日本人の琴線を直撃するキャッチーな方向に振り切っている。

メジャーからのセカンド・アルバムということで、いよいよ売れ線に走った?――いやいや、一瞬でもそう思った人は、前作のインタヴューを読み返してみよう。〈タブーがないこと〉がこのバンドのモットーだと胸を張るメンバーの言葉を辿れば、〈思い切りキャッチーなメロディーを書くこと〉が、今回の彼らにとっての〈攻撃的な挑戦〉なのだとわかるはずだから。

ただ、曲調は明るいが、歌詞を読みながら聴いていると思わず握った拳に汗をかくような、切なくも熱い世界観は健在。この音がドカンと広まったら日本も捨てたもんじゃないと思えてくるような、エネルギッシュな情熱と意志が詰まった作品だ。


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掲載: 2013年06月12日 18:01

更新: 2013年06月12日 18:01

文/宮本英夫