至るところで発見できるシガー・ロスの影響
叙情派ポスト・ロックの最高峰に立ち、さまざまな場面でその名前を引き合いに出されるシガー・ロス。ことアイスランドでは英雄的な扱いを受けているそうで、99年の2作目『Agaetis Byrjun』から連続してアルバム・チャート1位を記録中です。となると必然的にフォロワーは増え、なかでもロッカビーやアミーナは〈ポスト・シガー・ロス〉の有力株と言えるでしょうか。もちろん国外への影響力も絶大。NYに目を向けると、エンジェリックな歌声も手伝って〈ドリーム・ポップ化したヨンシー〉などと評されているポート・セント・ウィロウが、ここ日本には札幌にsleepy.abが、韓国にはLoro'sが、カナダにはティーン・デイズが、UKにはカイトが、スウェーデンにはマリー・オネッツが……とただの羅列になっていますが、多くのアーティストがシガー・ロスを意識したと思しき音を、今日も地球上のどこかで鳴らしているのです。
もちろん、直系のチルドレンだけがラヴコールを送っているわけではありませんよ。参考までにサンプリング例を一部挙げると、コールドプレイは“U.F.O.”とリアーナ参加曲“Princess Of China”で“Takk...”のイントロ部分を、キンブラは“Two Way Street”で“Saeglopur”のピアノ・リフを、クリスタル・キャッスルズは“Year Of Silence”で“Inni Mer Syngur Vitleysingu”のヴォーカルを拝借し、自身の作品に浮遊感だったり、ミステリアスな雰囲気だったりをプラス。
また、キャリアのわりに客演件数の極端に少ないヨンシーが、ティエスト製のエレクトロ・ハウス名盤『Kaleidoscope』に参加したことも大きな話題となりましたよね。意外な組み合わせではありますが、冒頭曲のアトモスフェリックなムードはあの声なくして作り得なかったはず。トップDJが本気でヨンシーを口説きにかかった姿が想像できます。
▼関連盤を紹介。
左から、ロッカビーの2011年作『Olgusjor』(Rec Rec/RALLYE)、ポート・セント・ウィロウのニュー・アルバム『Holiday』(Downtown)、sleepy.abの2013年作『neuron』(musica allegra)、コールドプレイの2011年作『Mylo Xyloto』(Parlophone)、キンブラの2012年作『Vows』(Warner Australia)、クリスタル・キャッスルズの2010年作『Crystal Castles』(Fiction/Polydor)、ティエストの2009年作『Kaleidoscope』(Musical Freedom)