あらうんど(((さらうんど)))なディスク
YMO 『浮気なぼくら』 アルファ/ソニー(1983)
細野晴臣が松田聖子や中森明菜に提供した楽曲を聴けばあきらかだが、YMOが作る歌モノには、旧態の歌謡曲にテクノのお化粧を施したテクノ歌謡にはない洗練があり、何よりトラックそのものが歌っていた。『New Age』と共に聴きたいアルバム。*久保田
岡村靖幸 『早熟』 エピック(1990)
スカートの澤部渡が作曲した“Neon Tetra”は、彼がアコースティック・ギターを掻き鳴らしながら作ったロッキンなデモを元に、ファンクの味付けを施したナンバーだという。Crystalがイメージしたのは岡村ちゃんのデビュー曲“Out of Blue”だったとか。*久保田
小沢健二 『LIFE』 ユニバーサル(1994)
〈理想を歌うポップス〉の象徴として、本文でも引用した公式サイトの一文で例を挙げているのは小沢健二“愛し愛されて生きるのさ”。巷のラヴソングとは一線を画す壮麗なメッセージを宿したこの曲が、〈歌〉にフォーカスした『New Age』の出発点なのである。*久保田
フィッシュマンズ 『Orange』 ポニーキャニオン(1994)
(((さらうんど)))はエレポップ、こちらはレゲエやダブ——それぞれ異なるアウトプットながらも、〈拝借〉ではなく歌の情感を効果的に響かせるための音像としてそれらをナイス・チョイスしているところが共通のセンスだ。*久保田
真心ブラザーズ 『time goes on』 キューン(1995)
前作に続き『New Age』にも夏の歌がある。彼らの描く夏に身を委ねながら記憶を辿っていったところ、色調とセンティメンタリズムが“サマーヌード”に重なった。鴨田潤も倉持陽一も美声とは言われないけどピュア。はしゃぎすぎてる夏の子供のようで。*久保田
TOKYO No.1 SOUL SET 『Dusk & Dawn』 スピードスター
クラブ・ミュージックを起点にソウルをセット。緻密なプロダクションから生み出されるイマジナティヴなメロディーは互いに通じる魅力ですが、言葉と歌を司る鴨田は、BIKKEと渡辺俊美の2役を一人でこなしている……ということか。*久保田
□□□ 『FANFARE』 WEATHER/HEADZ(2005)
自己流ポップス道を脇目も振らずに突っ走っている彼ら。キャッチーながらも実験的な作品を作り続けているが、振り返って本2作目を聴くと、真っ向勝負(!?)なギター・ポップが新鮮です。爽快なシンセとギターが清々しい“渚のシンデレラ”の80s感は眩しい! *加藤
SCOOBIE DO 『何度も恋をする』 CHAMP(2010)
ジャケからも窺えるとびきりのサマー盤! そもそもスムースな聴き心地のナンバーが多いスクービーの仕立てた青春夏恋曲揃いゆえに、その解放感は言わずもがな。特に粋でファンキーなギターのカッティングはやはり(((さらうんど)))にも通じる。*加藤
ヒダカトオルとフェッドミュージック 『REPLICA』 KISS FACTORY(2012)
楽曲のみならずアートワークも含め、AORの名作群の意匠を随所に盛り込んだ唯一のユニット作。わかる人にはグフフな内容だが、要素は取り込みつつかなり我流のヒダカ印でアウトプットされている。表題のセンスもイイネ! *加藤
やけのはら 『SUNNY NEW LIFE』 felicity(2013)
意識的ではないかもしれないが、フロアの視点でモダンなシティー・サウンドを生み出している彼。本作は〈日常〉に根差しながらも、〈ここではないどこか〉へ連れ出すファンタジーな音像で貫かれている。特に、クリスタルな“CITY LIGHTS”の飛翔感は格別! *加藤
NILE LONG 『Diggin' It Up』 Niw!(2013)
BRIXTON ACADEMYが新たに始動させたグループ。以前のニュー・オーダー的なニューウェイヴ路線から一転し、80sアーバン方面に的を絞ったクールなシンセ・ポップとなった。(((さらうんど)))のような歌謡風ではなく、海外のインディー・ダンス勢と同調。*加藤
一十三十一 『Surfbank Social Club』 Billboard(2013)
前作に引き続き往年のシティー・ポップの神髄をいまに蘇らせる傑作。ホイチョイ作品を意識……とテーマが明快ゆえ、DORIANや『New Age』でも熱いギターを鳴らしたKashifらによるリゾート感溢れた楽曲は、甘いシチュエーションを想起させる。*加藤
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2013年08月21日 17:00
更新: 2013年08月21日 17:00
ソース: bounce 357号(2013年7月25日発行)
文/久保田泰平、加藤直子