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インタビュー

KINGDOM☆AFROCKS 『Radioidiot』



アフロビートの始祖を支えたドラマー、トニー・アレンとのコラボ曲を中心に据えた新作。今回もこれまでにないバンドの表情がたっぷり窺える意欲作です!



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KINGDOM☆AFROCKSの前作『SanSanNaNa』はまぎれもない傑作だった。ナイジェリアの伝説的なアーティスト、フェラ・クティを始祖とするアフロビートに軸足を置きながら、それぞれバックボーンの異なるプレイヤーが集結しているがゆえの個性豊かな世界観。それは前作において初めて確立されたと言ってもいいだろう。

それから約1年。早くも届けられたニュー・アルバム『Radioidiot』は、彼らのさまざまな表情が覗くカラフルな内容となった。本作において何よりも重要なのは、今年4月、黄金時代のフェラ・クティを支えた名ドラマー、トニー・アレンが来日したこと。アフロックスとトニーはライヴで共演しただけでなく、本作に収録されている2曲でレコーディングも果たした。

「前から〈次はカヴァー・アルバムでも出そうか〉っていう話は出てたんですけど、(オリジナルにするにあたって)後押しになったのはトニーが来るっていうことで。一筆書きみたいにどんどん(曲を)作っていくのもアリだと思うし、いいタイミングだったんですよ」(IZPON、パーカッション)。

アフロビートはハイライフやジャズ、ファンクを混ぜ合わせた、極めて混血度の高いサウンド・フォーマットである。その何たるかを長年体現してきたトニーとのコラボレーションは、アフロックスの面々にも大きな刺激を与えたようだ。

「とにかく、しなやかなんですよ。そのうえでメリハリがあって。グルーヴに徹してクールに叩く時があれば、ソロになるととんでもないところまで飛んでいっちゃったり」(南條レオ、ベース)。

「トニーのドラムはめちゃくちゃ音が小さいんです。でも、それってすごく理に適ってて。音が小さいぶん、PAのほうで思い切りドラムの音量を上げられるんですよ。だから、太くて丸い音になる。いっしょにやってるほうは自然とドラムの音を注意深く聴くようになるし、結果的にやりやすいんです」(IZPON)。

リード曲“I Know 〜愛のド♬レ♪ミ♡レ☆ド〜”は、トニーのビートが牽引する一曲。全体を覆うサマー・ブリージンなムードはこれまでのアフロックスの楽曲にはなかったタイプのもので、もうひとりのゲストであるハナレグミの歌声も絶妙な効果を上げている。また、キーボードのSumiladyが初めてヴォーカルを務め、再度トニーをフィーチャーした“Listen Inner Voice”、フェラ・クティの名曲“Zombie”を「コントーションズみたいなニューウェイヴ・ディスコ・パンクのノリ」(IZPON)でカヴァーしたという“ZOMBIE DISCO”、ラベルによる74年のヒット曲とフェラ・クティのナンバーを続けてリメイクした“LADY MARMALADE/LADY”(IZPONが鎮座DOPENESS & DOPING BANDで活動を共にするCHAN-MIKAがソウルフルな歌声で華を添えている)、アフロックスのヴォーカリスト=NAOITOが自身のソロ作でもカヴァーしていたガーナの打楽器奏者、アジャ・アディの“ZIMBOO ZIN”——そしてインタールードを挿んで最後を締めるのは、バンドの前々作『FANFARE』に収録されたナンバーの、DJ UPPERCUTとTettory BLKによるリミックスだ。冒頭でも書いたように、これまで表に出てこなかった彼らのさまざまな表情が覗いている。

「出来上がったものを並べていくと、自然とストーリーが浮かび上がってくる。〈今回はこういうストーリーになったのか〉って毎回驚かされるんです」(IZPON)。

その〈ストーリー〉を象徴するのが、NAOITOが付けたという『Radioidiot』なるアルバム・タイトル。

「今回はいろんな曲が入ってるので、ラジオっぽいイメージがみんなのなかにあって」(IZPON)。

「ワールド・ミュージック・チャンネルのなかのアフロビート・チャンネルを聴いているイメージ」(南條)。

さまざまな〈!〉が飛び出すアフロックスのアフロビート・チャンネルは、この音楽が持つ無限の可能性を遊び心いっぱいに提示している。「この次のアルバムでコンセプチュアルなものを作りたいと思ってて。気持ち的にはもう次に向かってるんです」(南條)という彼らのネクスト・ステージに早くも期待が高まるばかりだ。


カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年08月27日 19:30

更新: 2013年08月27日 19:30

ソース: bounce 358号(2013年8月25日発行)

インタヴュー・文/大石 始