インタビュー

SEBASTIAN X 『POWER OF NOISE』



聴き手の日常を圧倒的な生命力で照らす〈明るい音楽〉。ポジティヴなパワーをストイックに磨き上げ、4人は次なるステージへ!



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早くも通算5作目(フル・アルバムとしては2作目)。ほぼ1年おきにリリースを重ねながら、SEBASTIAN Xの4人は自分たちにしか鳴らせない音楽をひたむきに追求してきた。ニュー・アルバム『POWER OF NOISE』は、その積み重ねがまさに実を結んだひとつの成果。つまり、これまでにない要素を加えながら、同時に誰が聴いてもSEBASTIAN Xだとわかるサウンドがここでは具現化されているのだ。結成時からバンドの根幹を支えてきたものについて、ヴォーカルの永原真夏はこう語る。

「自分たちの明るさをずっと信じているんだけど、その明るさで衝撃を与えるのって難しいんですよね。少し前に〈リア充〉みたいな言葉が流行ったように、どこかで〈明るい=薄っぺらい〉みたいな共通認識もあったし。でも、私が好きだったロックはそうじゃなかった。(忌野)清志郎も(甲本)ヒロトも明るかった。私はロックスターのポジティヴなオーラに憧れてたんです。見ているだけでパワーがもらえる存在に自分もなりたかった」(永原:以下同)。

聴き手の日常を照らす〈明るい音楽〉。2009年の初ミニ・アルバム『ワンダフル・ワールド』からその一点を志しながら、永原は歌詞表現に向ける情熱も高めていく。

「使われる場によって、言葉がアイコンみたいに意味を固定されるのが少しもったいなくて。例えば“DNA”で〈アナーキー〉という単語を使ったのもそう。パンクスが言ったらそのままだけど、それを私みたいな人が使ったら、言葉本来の強さがもっと前に出るんじゃないかなって。言葉の意味って時代と共に転がっていけばいいと思うんです」。

楽曲制作においても、本作では新たな試みがなされている。永原のアカペラにギターレスのアンサンブルを重ねていくという基本的な作曲方法と、沖山良太(ドラムス)がその屋台骨となる構造こそ変わらないが、今回は工藤歩里(キーボード)のデモを元に構築した曲もあれば、飯田裕(ベース)が主導権を握った曲もあるという。その結果、永原の歌い手としての存在感にもより焦点が当たることになったようだ。

「もともと4人の個性が対等にあるバンドだから、かつてはアーティスト写真で私だけがみんなの一歩前に出るのとか、絶対に嫌だった。それが『FUTURES』(2011年)をきっかけに気持ちを切り替えたんです。だって、フロントに立つ私のキャラがちゃんと伝わらないと、結局は演奏する3人の表現も完成しないから。でも、自分がリードする必要はないんです。私はひとつの象徴になればいい。それこそがSEBASTIAN Xなんですよね」。

アルバムの冒頭を飾る“POWER OF VITAL”は、SEBASTIAN Xがこれまでに発表してきた楽曲中でもっともラウドなナンバーだ。しかもその〈キック・スネア・ハイハット OK!〉という歌い出しは、この4人がSEBASTIAN X以前に組んでいたバンドの曲から引用したものらしい。どんな状況でも揺らぐことのなかった彼女たちの〈明るさ〉はいま、このバンド独自のスタイルとして消化されたようだ。

「実は気になってたんですよ。私たちのことをサウンド面で紐解いてくれる人があまりいないって(笑)。でも、いまはそこにコンプレックスを感じていません。むしろ〈イェイ!〉な気分です。だって、キラキラしたパワーって言葉にできないんだから。だったらそのパワーをもっと出したい。これが私たちなりの戦い方。吹っ切れましたね! ようやく!」。



▼SEBASTIAN Xの参加作品を紹介。
左から、2010年のコンピ『TOKYO NEW WAVE 2010』(FlyingStar)、2012年のカヴァー集『Happy Holidays! 〜80's POPS COVERS〜』(avex trax)、2012年のコンピ『あなたの夢に応援歌』(ポニーキャニオン)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年08月26日 20:30

更新: 2013年08月26日 20:30

ソース: bounce 358号(2013年8月25日発行)

インタヴュー・文/渡辺裕也

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