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インタビュー

大萩康司

©Ryotaro Horiuchi

ブリテンの傑作『ノクターナル』を中心に

前作『アストル・ピアソラ作品集』も大好評だったギタリスト・大萩康司が、今年はイギリスの作曲家の作品集を録音した。

「ベンジャミン・ブリテンの生誕100周年という大きな節目の年なので、イギリス音楽を中心としたアルバムを作りたいなと思いました。ブリテンの『ノクターナル』という作品は現代ギターにおける傑作だと思います。現在活動しているギタリスト誰もが、一度は演奏する、あるいはしたことがある作品でしょう」

その『ノクターナル』を初演したのはイギリスを代表するギタリストであるジュリアン・ブリーム。

「そのブリームは数多くの作品を初演していますが、このCDに収録したウォルトンの『5つのバガテル』もそのひとつなんです」

ということで、ブリテン〜ブリーム〜ウォルトンという大きな柱が出来た。ブリテンがその発想のもとにした『来たれ、甘き眠り』の作曲家ダウランドの名作も収録したが、2013年はたまたまブリテン生誕100周年、ダウランド生誕450周年、ウォルトン没後30周年というとても奇縁な年であった。そしてジュリアン・ブリームも1933年生まれだからちょうど80歳。

「もちろんそのイギリス作曲家だけでも良かったのですが、なにか他の視点も欲しいと思ったので、野平一郎さんに編曲を依頼しました。野平さんの『城への道』という合唱とギターのための作品があり2012年の初演に参加したこともあり、野平さんの視点でイギリスのポップスを編曲してもらったら、何か違う世界が生まれるかもしれないと思ったのです」

そしてスティングの『シェイプ・オブ・マイ・ハート』の他『アメイジング・グレイス』『スカボロー・フェア』の3曲が野平一郎編曲として収録された。

「多くの人が知っている曲でも、編曲によって違った風景が見えることがあります。スティングの作品でも、編曲すると、こんな風に変わるのか、そんな部分を楽しんで頂けると思います」

そしてウォルトンの『5つのバガテル』。

「とても個性的な5つの小品から出来ています。これは作曲者自身がギター版の後にオーケストラ版を作っていて、その編曲も面白い。今回はそのオーケストラ版の音のイメージも意識しながら、録音に臨みました」

そしてブリームが初演したブリテンの『ノクターナル』はやはり傑作だと、大萩の録音で再認識した。

「おそらくブリテンとブリームの間でコミュニケーションがうまく取れていて、じっくりと時間をかけて仕上げられた作品なのでしょう」

私たちも、その傑作をじっくり楽しもう。

LIVE  INFORMATION
『大萩康司 ギターリサイタル』

10/20(日)14:00開演 ザ・フェニックスホール  
11/15(金)18:30開演 仙台市宮城野区文化センター  
12/18(水)19:00開演 東京文化会館 小ホール

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年08月20日 11:56

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

interview&text:片桐卓也