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インタビュー

INTERVIEW(3)——カヴァーはいかに変えられるか



カヴァーはいかに変えられるか



GOATBED



——で、今回は既存曲をすべて入れたうえで、トータルでどういう流れを作るか、ということだったんですかね? 6曲目、ちょうど折り返し地点にあたる“AIDA 1/2”を挿んで流れを変えつつ、全体としてはジワジワとアゲていく展開で。

「そうですね。でも、8曲目の“COSMOCALL FIELD”とか次の“WARM LEATHERETTE”ぐらいからアガるのかな?と思ったらアガらないっていうね。最後の“DREAMON DREAMER”と“in the OVAL”も、アガりきらないですぐ終わる感じですよね(笑)。ただ、そこまでに到達するタイムが短いので、こういう音に免疫がない人でもしんどい感じにはならないで最後までいけると思うんです。この手の曲って、ホントはあと1、2分タイムがあったほうが作りやすいんですよ。だけどあえてそうしてない。もともとそういうところがあるんですけどね。なるべく……」

——コンパクトに、っていうのは常々おっしゃってますね。

「うん。今回は、最後の曲だけ5分ぐらいありますけどね」

——あと、先ほどお話に出た“WARM LEATHERETTE”はノーマルのカヴァーで。

「そうですけど、もう原型が残ってないんで……っていう感じですよね。歌詞はちゃんと元の通りに歌ってますけど、原曲を感じるところは何ひとつない。というか、そういうふうにできる曲を選んだんですよ。無調とまではいかないけど、ミニマルで、旋律がなくて、ただ喋ってるだけみたいな、そういう曲なんかないかな~、って。それでみんなが知ってるような曲。俺の中だとこれ、みんなが知ってる曲なんですけど。有名っちゃあ有名ですよね?」

——一部の人に有名な曲、でしょうか。ナイン・インチ・ネイルズとか、最近だとライバッハもカヴァーしてましたね。

「で、この曲はそれで思い付いたんですよね。これならどうにでもできるな、って。シングルのときに入ってた“YAMA-HA”(“DREAMON DREAMER”に収録のフンペ・フンペのカヴァー)とかもそうですけど、いかに変えられるか、みたいな、原曲をモチーフにして自分がいじくったらこういう感じになります、みたいなことをやるのが好きなんですよね。そこに気付いたんです、最近。カヴァーは昔から結構入れてましたけど、これまでは、わりかし原曲に忠実だったんですよね。例えばオリビア・ニュートン・ジョンの“Physical”とかやったことあったけど、それはあのアルバム(2006年作『シンセスピアンズ』)の中にあの“フィジカル”が入ってることが重要だな、と思ってやってたんですよね。それが今回は、ヴィジュアル・ショッカーが別ユニットで“WARM LEATHERETTE”やってるぜ!みたいな。どんなヴィジュアル・ショックだよ、って(笑)」

——(笑)まあ、cali≠gariのインタヴューのときの言葉をお借りすれば、〈ちょっと変わったヴィジュアル系〉ですからね。ただ、先ほどキャバレー・ヴォルテールのお話が出ていたことを思えば、ミュート周辺ということでむしろ一貫してると思いますよ。

「そうですかね。うん」



男と女



GOATBED

——ちなみに“Warm Leatherette”はグレイス・ジョーンズもカヴァーしてますが、今回のアーティスト写真を見て思い出したのは、まさにグレイス・ジョーンズで。

「まあ、なんとなくなんですけどね。でも良かったです。それ初めて通じましたからね。なんでレディ・ガガみたいな頭してんの?ってみんなに言われて」

——『「」ying & yang』というタイトル、〈陰陽〉にもリンクしますしね。対立したり、依存し合うふたつの気。相反するふたつの要素が共存するイメージと言いますか……その……。

「(笑)言葉にしようとすると難しいですよね。すごい陳腐な感じになってくるじゃないですか。でもまあ、イメージはいまおっしゃったようなことですけどね。ジェンダー的なやつです。そんなのもまあ、あったりしますし、男と女みたいなね、どっちかっていうとそういう感じなんですけどね。〈陰陽〉って、本来は〈yin〉の表記には〈g〉が入ってないんですけど、なんで〈g〉を入れたかっていうのは、男女平等にしたってことなんですね。だからスペルを間違えてるわけじゃないんです(笑)。なんでこの変な記号(「」)ついてるの?っていうのといっしょなんですけど」

——では、〈「」〉はなぜついてるんですか?

「それはね、そういうメールが送られてきたんです」

——え?

「〈アルバムのタイトルを決めてください〉っていうメールがきたんですよ。そこにこういう〈「」〉がついてたんですけど、〈これ格好良いな〉と思って。そこから一気にいろんなことを思い付いたんですよ」

——その〈「」〉という記号のフォルムからインスピレーションを受けたと。

「うん。この〈「」〉の中に収めなきゃいけないものなのに、まだ1曲もないし、ハコだけ先に作らなきゃいけないみたいな。イメージにはそういうのもあったんですよね。だからこの記号を残そうと思って。あと、桑田佳祐はノーチェックでしたから(GOATBEDがアルバムのタイトルを発表した直後に桑田のシングル『Yin Yang/涙をぶっとばせ!!/おいしい秘密』がリリースされた)、かろうじて〈g〉を入れといて良かったなと(笑)」


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掲載: 2013年08月21日 18:01

更新: 2013年08月21日 18:01

インタヴュー・文/土田真弓