インタビュー

THE STRYPES 『Snapshot』



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2010年代に舞い降りたロックンロールの救世主か、50年に1度の突然変異種か。リズム&ブルースを基調にしたクラシカルなロックンロールを手に、彗星の如く登場したストライプスがいま、世界を掴もうとしている。

昨年、エルトン・ジョン御大の手引きでマーキュリーと契約するや、瞬く間にアイルランド本国およびイギリスで大ブレイクした彼ら。その人気は私たちの住む国にも飛び火し、今年4月に日本限定盤『Blue Collar Jane EP』でプレ・デビューを果たすと、新聞に、雑誌に、TVに引っ張りだこ。早々に実現した初来日公演のチケットは、即日ソールドアウトとなった。

「実はつい先日、まさにそのことについて話し合ったばかりなんだけど、僕らは台風の目にいるからか、周りの状況がいまひとつ掴み切れていないんだよね。それにいつも忙しく動いているから、立ち止まって〈凄いことになってる!〉なんて考える暇もない。ジョシュ・マクローリーについての記事を読んでも、自分という認識はあまりなくて、〈ジョシュ、上手くやっているな! がんばれよ!〉みたいな気持ちになるだけなんだよ(笑)」。

こう語るのは、電話取材に応じてくれたギタリストでメイン・ソングライターのジョシュ・マクローリー。今夏の〈グラストンベリー〉にも出演した彼らが、セックス・ピストルズ『Never Mind The Bollocks, Here's The Sex Pistols』(77年)で知られるクリス・トーマスをプロデューサーに迎え、ついにファースト・フル・アルバム『Snapshot』を完成させた。

「タイトルを『Snapshot』にしたのは、等身大の僕らの写真みたいな作品だから。僕らのライヴがいかにエキサイティングかって話題になっているようだけど、そのライヴのエネルギーを封じ込めたかったんだよ。反響が良かったリズム&ブルースのカヴァーも入れた。リズム&ブルースを知らない人に聴いてほしいんだ。巷に溢れ返っているのは、嘘臭い音楽ばかりだしね」。

ジョシュの言葉がアルバムのすべてを言い表しているが、約半分を占めるカヴァー曲(コースターズやボ・ディドリーなど)が完全にストライプスのナンバーに生まれ変わっていること、そしてヴィンテージ感を漂わせた“Blue Collar Jane”をはじめとするオリジナル曲が、そこにまったく遜色なく溶け込んでいることを付け加えておこう。これぞまさしくタイムレス。

「ロックンロールを取り戻したいんだ。そしてライヴに来てもらって、楽しんでもらいたい。最近は刺激に欠けて、陰気臭いバンドが少なくないだろ? だから、同年代のキッズから年配の方まで思いっきり弾けられるようなパフォーマンスを届けたくって! ライヴってそういうものだと思う。つまり僕らのためのライヴではなく、お客さんのためのライヴなんだよ」。

あらゆる意味で新人離れした本作を引っ提げ、彼らは10月に再来日公演を行う。

「僕らは日本での人気をどう受け止めていいものか、少し混乱しているんだ(笑)。でも凄く嬉しいし、また日本に行ってライヴをやるのが楽しみだよ。前回は本当に最高だったからね」。

最後に、この4人の平均年齢が16歳であることにも触れておこう。すでにあちらこちらで騒がれているものの、正直〈歳なんか関係ねえよ〉って思いますか?……と尋ねてみた。

「そう感じることもある。〈年のわりには上手いよ〉とか言われると、なんでわざわざ〈年のわりには〉って付けるんだよって思うね。〈上手いよ〉とだけ言ってくれればいいのに(笑)。特に自分たちが若いという意識はないんだ。僕らが敬愛するジャムやエルヴィス・コステロ、アンダートーンズ、ドクター・フィールグッド、ローリング・ストーンズなどは、みんな僕らぐらいの歳でキャリアを始めたわけだしさ」。 



PROFILE/ストライプス


ロス・ファレリー(ヴォーカル/ハーモニカ)、ジョシュ・マクローリー(ギター/ヴォーカル)、ピート・オハンロン(ベース/ハーモニカ)、エヴァン・ウォルシュ(ドラムス)から成る平均16歳の4人組。2008年にアイルランドで結成。2011年からライヴ活動を開始する。2012年4月にデジタルEP『Young, Gifted & Blue』を発表。同年12月にはマーキュリーと契約し、NMEなどで特集が組まれるようになる。今年に入って“Blue Collar Jane”“Hometown Girls”と立て続けにシングルをリリースし、4月にそれらをまとめたプレ・デビューEP『Blue Collar Jane EP』を日本限定で発表。このたび9月11日にファースト・アルバム『Snapshot』(Mercury/ユニバーサル)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年09月11日 18:00

更新: 2013年09月11日 18:00

ソース: bounce 358号(2013年8月25日発行)

インタヴュー・文/鈴木宏和