インタビュー

DINARY DELTA FORCE 『THE 9』



〈MOSS VILLAGE〉こと神奈川・藤沢から黒く太い狼煙を上げ、全国に中毒者を増やしてきた4MC——3年ぶりの新作はさらに9H6Bな筆致を耳に刻み込む!!



DINARY DELTA FORCE



RHYME BOYA、DUSTY HUSKY、calimshot、祀SPの4MCが繰り出す現場叩き上げの研ぎ澄まされたフロウと、太くラギッドに刻まれたサンプリング・ビーツ——2010年のファースト・アルバム『SOUNDTRACK TO THE BEDTOWN』で一躍その名を知らしめ、地元の神奈川は藤沢から全国へとダーティーな黒煙を拡散しているDINARY DELTA FORCE。国内はもちろん台湾まで足を伸ばしたツアーやメンバー各自のソロ活動を経て、約3年ぶりに届いたセカンド・アルバム『THE 9』は、そのハードコアな部分をさらに純化した、このうえなくタイトな作品に仕上がっている。

「“9HARD-N-6BOOMBAP”って曲にも出てるんですけど〈9H6B〉って鉛筆の芯の硬さと黒さのことで。俺らのなかのスラングで〈9〉はいちばん硬いもの、ハードって意味なんですね」(DUSTY HUSKY)。

「ファーストはある程度流れを意識して作ってた部分もあるんだけど、セカンドはピークから始まってピークのまま終わろうみたいな。最初から150のテンションで突っ切るというか、短距離走のイメージでずっと飛ばしていこうって」(RHYME BOYA)。

例えばDUSTYの〈いまこの手で叩き割ったSOUNDTRACK〉という鮮烈なラインで始まる“STAY REAL LIVES”。彼の「ビートを聴いた時点でクラシックができるって直感した」との言葉通り、初作の成功に慢心することなく、信じる道をさらに突き詰めることで新しいステージを切り拓こうとする4人の意志が昇華された、覚悟と気迫の伝わってくる逸曲だ。トラックは、アウトロの後にボーナス・トラック的に置かれた“SIDE A〜不朽の金剛石〜”でのダイヤモンドD(D.I.T.C.)を除き、盟友のNAGMATICがすべて手掛けているが、“NOWAY, ANYWAY”では珍しいジャジーな3拍子のビートに挑戦するなど、ここでも従来のスタイルに安住しない姿勢を見せている。

「NAGMATICが作るビートは(BPMが)80から100ぐらいの速さが多かったんだけど、それは前作でも自分のソロでもやったし、乗り飽きた感があったというか……もっと遅いの持ってきてよって言ったらあのビートが飛んできて」(RHYME BOYA)。

「その一曲はいちばん気楽に向き合えましたね。4拍子だといままで通りのやり方になるんですけど、3拍子になるだけでパターンが変わるんで。新鮮で楽しかったです」(calimshot)。

他にも「ファーストに入ってる“BLACK BLAQ FRIDAY”の全国版のようなものを作りたかった」(祀SP)という“スーパー・ラルゴ”では、ツアーで巡った各所での体験を進行形で描いたりもしていて、地元のフッド感を前面に出していた前作と比べ、映し出す景色やラップのテーマもガラリと変わった。だが、目先の新しさに踊らされるのではなく、あくまで黒くて埃っぽい独自のスタイルという部分は6Bな太い芯で貫かれており、まさに9Hな硬度の美学を感じさせる。

「俺らが4人のフィーリングでカッコいいと思ったものをずっと追求してる。だから最先端のものに追いつこうとか思ってないし、逆に90年代とか一世代前のサウンドをもう一回掘り起こしてやろうとも思ってない。ずっと活動していくなかで、ダイナリっぽいカッコ良さとか煙たさっていうのが何となく共通認識としてあって、そこを追求してる」(RHYME BOYA)。

「ブームっていうのは終わっていくものだし、俺らは一発でっかい花火を打ち上げたいとかいうタイプではないんで。ホントに好きなことをやって、それに対して反応をくれる奴らとずっとやっていけたら楽しいかなって」(DUSTY HUSKY)。



▼ダイヤモンド&ザ・サイコティック・ニューロティクスの92年作『Stunts, Blunts & Hip Hop』(Mercury)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年10月16日 17:59

更新: 2013年10月16日 17:59

ソース: bounce 359号(2013年9月25日発行)

インタヴュー・文/北野 創

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