LiSA 『LANDSPACE』

いまや日本のエンターテインメントの中心と言っても過言ではないアニメ・シーンとリンクしつつ、みずからの音楽的なルーツであるアヴリル・ラヴィーンやグッド・シャーロット、グリーン・デイにフーバスタンクなどUSパンク〜オルタナティヴ・ロックの匂いを振り撒くサウンド。そこに、ポジティヴな気持ちを高めてくれるポップソングとしての機能も備えている。LiSAのニュー・アルバム『LANDSPACE』──“crossing field”“traumerei”といったヒット・ソング（前者はTVアニメ『ソードアート・オンライン』の、後者はTVアニメ『幻影ヲ駆ケル太陽』のオープニング・テーマ）を収録する一方で、「デビュー以来ずっと、自分が好きなことを自然な形でやらせてもらってきて。それをさらにポップで聴きやすく表現できたと思う」と、当人が手応えの強さを口にする本作。その起点は、ノンタイアップながらオリコン初登場6位を記録したシングル“best day, best way”だったという。

「アニメのタイアップ曲に関してはアニメの世界観に合わせて制作することが多かったんですけど、シングルのカップリングやアルバムの収録曲については〈これがLiSAです〉という音楽をしっかり表現してきて。それを初めてシングルのタイトル曲としてリリースしたのが“best day, best way”だったんです。ずっとテーマにしてきた〈今日もいい日だっ。〉ということを歌った曲でもあって、あの曲を受け入れてもらったことは自信になりました」。

表題のイメージ通り、ハイスピードでブッ飛びまくるメロディーが印象的な“コズミックジェットコースター”や、憂いを帯びた旋律とトリッキーなアレンジがひとつになった“ヒトリワラッテ”、「アメリカの高校生がパーティーで踊りまくってるところをイメージしていました」という“say my nameの片想い”など今回のために制作された新曲も、彼女特有のハイブリッド感覚に満ちている。数多くのアニメソングを手掛ける黒須克彦、UNISON SQUARE GARDENのメイン・ソングライターとして知られる田淵智也、ボカロ系のプロデューサーとして活躍するwowakaといった多彩なクリエイターによる楽曲と〈シンガー・LiSA〉とのコラボレーションの妙こそが、今作の魅力の根幹にあると言っていいだろう。

「皆さん、〈LiSAだったら歌えるだろう〉という感じで、ハードな球（楽曲）を投げてくれるんですよね（笑）。私としても〈絶対に自分のものにしたい〉という気持ちで挑戦してきたし、一生懸命やっているうちにいまの状況に辿り着けたんじゃないかなって。作詞家の方、アレンジャーの方もそうなんですが、私自身が大好きで〈ぜひいっしょにやりたい〉と思える人たちが参加してくれているのも大きいと思います」。

アルバムの最後を飾るのは、彼女自身の作詞／作曲による“winding road”。好きな人がいなくなってしまうのは悲しいけど、大切な人といっしょにいた記憶があれば、また歩き出せる──このナンバーには、デビューから2年半のなかで強まってきた表現者としての決意がしっかりと込められている。

「〈こんなことが歌えるほど、強くなりました〉って（笑）。このアルバムには〈聴いてくれる人に思いきり楽しめる場所を作ってあげたい〉っていうテーマがあるんですが、“winding road”に関しては、自分自身の気持ちを伝えたいという思いが強いかもしれないですね」。

来年の1月3日には初の日本武道館公演も開催。自身のアーティスト性をより奔放に発揮した『LANDSPACE』の楽曲は、当日のステージを大いに盛り上げてくれそうだ。

「武道館はひとつの集大成というか、みんなで作ってきた最高の場所を、めいっぱい大きな会場でも変わらず作り上げたいですね。『LANDSPACE』の曲もぜひやりたいです!　ポップな曲が多いですし、ライヴでも重要な役割を果たしてくれると思うので」。

PROFILE／LiSA

岐阜出身、6月24日生まれのシンガー。2008年より東京へ拠点を移して音楽活動を行っていたなか、2010年に放送されたTVアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド、Girls Dead Monsterの2代目ヴォーカル＝ユイ役の歌い手に抜擢され、同バンド名義のシングル“Thousand Enemies”でCDデビュー。2011年には、ソロとして初のミニ・アルバム『Letters to U』を発表。アニメのタイアップ曲のリリースで認知を広めながら、2012年にはファースト・フル・アルバム『LOVER“S”MiLE』を送り出す。2014年1月に控える初の日本武道館公演を即ソールドアウトさせるという好状況のなか、このたびニュー・アルバム『LANDSPACE』（アニプレックス）を10月30日にリリースした。