Ukandanz
photo by Miki KAGAMI
ハイブリッドと言われてもなお聴こえるエチオピークのソウル
エチオピア音楽のリイシュー・シリーズ『エチオピーク』が注目されはじめたのは90年代のことだった。当時はレア・グルーヴ的人気だったが、近年欧米ではエチオピア音楽に影響を受けた人たちが続々と出てきている。そのひとつが今年の夏にスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド/スキヤキ・トーキョーに出演したユーカンダンツだ。彼らはエチオピア人歌手アスナケ・ゲブレイエスとフランスの4人のミュージシャンによる混成バンドで、エッジのきいた音楽が話題を呼んでいる。ギタリストのダミアン・クリュゼルとサックス奏者リオネル・マルタンに話を聞いた。
「19歳でギターを手にして、最初はブルーズを弾いていたが、オランダ人の女の子を追いかけてアムステルダムの音楽大学に入って(笑)、ジャズ/即興で知られるミシャ・メンゲルベルグに対位法と即興を学んだ。1999年にドイツ人のサックス奏者オラフ・ベルセンに誘われて音楽の仕事で初めてエチオピアに行ったんだけど、1週間でクビになって、どうしようかと思っていたら、フランシス・ファルセトと出会って、エチオピア音楽への扉が開かれた」(ダミアン)
そのフランシスこそ『エチオピーク』シリーズのプロデューサーだ。2001年にはシリーズ15作目として、ダミアンやオラフたちとエチオピアのミュージシャンたちによる『ジャンブ・トゥ・アディス』というアルバムが生まれ、ダミアンはエチオピア音楽の世界にさらに一歩踏み出すことになった。
「ぼくは15年くらいジャズや即興のシーンにいたんだけど、非常に個人的な音楽という気がして、知的なジャズではできないこと、一体感を分かち合える音楽がやりたくて、このバンドに入った。他の二人のメンバーもジャズやクラシックの素養がある人たち。最初にエチオピアの曲をやったとき、彼らは笑いながら演奏していたけど、そのうちとりつかれてね。それくらいユニークでリッチな音楽なんだ」(リオネル)
彼らの音楽はプログレ+ヘヴィ・メタル+グランジ+エチオピアとでも言うべきもの。東京のステージでもプログレ/メタル色炸裂のフランス勢と、踊りながら熱唱するアスナケが対照的に共存していた。
「ブルーズやロックはアフリカとヨーロッパの音楽がアメリカで出会って生まれたフュージョンだよね。ぼくらがめざしたのはそれと同じで、エチオピア音楽そのものではなく、すでにフュージョンであるロックとエチオピア音楽のさらなるフュージョン。エチオピアだけでもヨーロパだけでもないバランスをとることを大切にしている。そうすることで、ぼくらもエチオピア人のアスナケも自分でいられるからね」(ダミアン)