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インタビュー

INTERVIEW(2)――互いの共通点



互いの共通点



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きのこ帝国



――では、改めて、お互いのバンドに対する印象は?

佐藤「paioniaっていうか髙橋君は、裸一貫みたいなイメージがあって(笑)、ハートで勝負してるっていうか、気持ちをいちばん大事にしてると思うんです。アンサンブルとかももちろんいいんですけど、でもそれは二の次で、歌心が真ん中にあるのがすごくいいなって思うポイントです。そこには悔しさも感じてて、paioniaのライヴを観ると他のことが小賢しく感じてきちゃって、大事なことを忘れないようにしないとなっていう、再確認させてもらってます」

髙橋「言いすぎじゃないですか(笑)?」

佐藤「いや、歌詞とかももう……私paioniaのライヴで毎回泣いてるんで(笑)」

髙橋「でも、僕もきのこに対して同じようなことを思ってて、佐藤さんは歌がすごいですからね。それにきのこはシューゲイザーって言われたり、佐藤さんの歌が際立ってるって言われたり、いろんな方向から見て、それぞれいいっていうのがズルイなって。僕ら良くも悪くも一方向からしか見れないようなところがあるんで」

――今回対談するにあたってひとつ思ったのが、それぞれのアルバムのタイトルが呼応してるなってことで。きのこ帝国の新作が『ロンググッドバイ』で、今年3月にリリースされたpaioniaのファースト・アルバムが『さようならパイオニア』。またpaioniaの新作が『rutsubo』で、きのこ帝国が昨年発表した初作が『渦になる』――なんか通じるところがありませんか?

佐藤「ホントだ! 怖いんだけど(笑)。実はお互い影響受けてるのかなあ」

――なので、このあたりのことをキーワードに話をしようと思うんですけど、まず〈別れ〉について。きのこ帝国はこの1年ほどで経験した仲のいいバンドやライヴハウスとの別れが新作のタイトルに関連してるそうですね。

佐藤「そういう喪失があって、でも日常もあって、めちゃめちゃ不幸ではないけど、完璧に幸せでもない。その微妙な揺らぎみたいなのをいまのタイミングで作品として残しておかないと、もしかしたら数年後にはない感覚かなって思ったんです。20代も半ばになって、みんなが新しい人生を歩み出して、これまで同じ道を歩いてた人がパッとあるきっかけで違う道を歩み出したりすることが多いなか、いまの自分たちをホントにフラットに残しておきたいなって」

――『ロンググッドバイ』っていう言葉自体は、レイモンド・チャンドラーの小説から来てるんですか?

佐藤「もともとすごく好きなタイトルだったんです。悲しいけど、でもそれだけじゃない、不思議な言葉だと思ってて。一生さよならするわけじゃない、またどこかで会えるかもしれないっていう感じもぴったりだなって思ったんですよね」

髙橋「僕はそういうのが羨ましいっていうか、〈別れだ〉って思う余裕がないんですよね。彼女と別れた、みたいなのはすごく辛いですけど……こんなこと言うと、非人道的に聞こえるかもしれないですけど、いつも自分のことだけで精一杯なんです。例えば、友達が遠くに行っちゃうときでも、〈そっか〉みたいに思っちゃうんですよね」

佐藤「まあ、それはその人の思い入れ次第なんじゃない? 彼女だったら悲しむわけでしょ? その比重はやっぱり人それぞれ違うと思うから」



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paionia



――『さようならパイオニア』には、どういう〈別れ〉の意味があったんですか?

髙橋「もともとバンド名が片仮名で〈パイオニア〉だったんですけど、デビューと同時に〈paionia〉になったんで、片仮名の〈パイオニア〉に対する〈さようなら〉だったり、あとは〈これからやっていくぞ〉っていう意味の〈(それまでに)さようなら〉でもありましたね」

――じゃあ、やっぱり〈別れ〉が曲作りの原動力にはなってそうですよね。

髙橋「悲しいことしか歌にならないですからね。ほとんどっていうか、全部なのかな、俺の場合」

――ハッピーなことは歌にはならない?

髙橋「いまのところなってないですね」

佐藤「でも、ハッピーすぎると悲しくならない?」

髙橋「例えば?」

佐藤「例えば……春が来まして、いい感じの天気で、桜が散ると綺麗なんだけど、同時に悲しくもなるというか、幸せだと幸せだけじゃないんだよね。それをまたどこかで失うのか、それとも過去に失ったものを思い出してしまうのか……わかんないけど、喜びのたびに悲しみも付きまとってるイメージなんだよね、自分のなかで。幸せだなって思うときって、しみじみ悲しい感情も付きまとうっていうか」

髙橋「僕、旅行とか好きじゃなくて、それは要は幸せになる前にそれを避けちゃうというか、帰りのことを考えちゃうんです。遠くに行けば行くほど、帰りはめちゃくちゃ辛いだろうなって考えちゃって、結局行かないんです」

佐藤「わからなくもないけど……髙橋君、やばいなあ(笑)」

――でも、さっき高橋君自身でも言ってたけど、〈別れ〉は〈始まり〉も意味してるわけで、決してネガティヴな意味だけではないですよね。

髙橋「バンドをやってるってだけで、結構ポジティヴなことだと思います。曲は曲として、完全にネガティヴなものもありますけど、バンドをやってるっていう意味ではポジティヴですよね」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年12月04日 18:00

更新: 2013年12月04日 18:00

インタヴュー・文/金子厚武  写真/山川哲矢

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