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インタビュー

OKAMOTO'S 『Let It V』

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2014年01月15日 18:01

更新: 2014年01月15日 18:01

ソース: bounce 363号(2014年1月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武



現在の日本のロック・シーンに対する悶々とした思いを抱えながら試行錯誤を重ね、辿り着いた彼らの答え。音楽ってもっと自由なものなんですよ!



Okamoto's_A



彼らなりのアンチテーゼ

〈初めてプロのミュージシャンとして作品を作れた〉とメンバーが口を揃える前作『OKAMOTO'S』で幕を開けた2013年は、OKAMOTO'Sが快進撃を見せた1年と言える。ツアーやフェスでの充実したライヴに加え、山下智久“SUMMER NUDE '13”のアレンジを手掛けたり、前年にもコラボしていた杏子の楽曲に演奏で参加したり、ハマ・オカモト(ベース)がももいろクローバーZをはじめとした幅広い客演をこなすなど、バンドを取り巻く状況は大きな広がりを見せた。しかし、その手応えの一方で、いまの日本の音楽シーンに対する大きな落胆も感じていたという。

「日本の音楽の盛り上がってる部分がおもしろくないなというのを痛感して、〈じゃあ、どういうものを提示していこうか〉っていう、はっきりした使命感を感じた年でした。これまでもずっと文句ばっかり言ってたんですけど(笑)、それがあながち間違ってないなということが見えたので、そこはストレートに言っていきたいなって。こういうことを音楽オタクのおじさんが言うよりも、若い世代が言えば効力はあるんじゃないかって。初めて自分たちの年齢を武器にできると思ったんです」(ハマ)。

2014年はバンドにとってCDデビュー5周年であり、ハマが加入した現編成での5周年にもあたる。メジャー通算5枚目のニュー・アルバム『Let It V』は、そんなアニヴァーサリー・イヤーを飾る作品であると言えるが、その制作の背景には、お手軽な4つ打ちや厚みのあるギター・サウンドが蔓延している日本のロック・シーンへの強い危機感があったのだとか。

「4つ打ちそのものを否定しているわけではないんです。ちゃんとルーツにそういうものがある人たちが演奏するのは、カッコイイと思うんですよ。ただ、プロのミュージシャンとして、お金を取ってCDなりライヴなりで音楽を提供するにあたっては、〈こんなものもあるよ〉という意識も重要で、その意識の薄れ方が病的なレヴェルだと思って。〈ライヴで盛り上がっている景色をいかに作るか〉みたいなことにしか頭が行ってなくて、カッコイイ4つ打ちを創っている人の恩恵をつまみ食いしてる輩がいっぱいいる。ロック・フェスという名のお祭りへ行ってるのに、屋台が全部焼きそばみたいな感じというか……」(ハマ)。

「この状況は、長い目で見た時に怖いと思うんです。瞬発力で音楽が作れることも素晴らしいとは思うんだけど、入口にあたるものがそういうものばっかりになると、将来どんどん先細って行ってしまうのではないかっていう危機感をすごく感じたんです」(オカモトコウキ、ギター)。

あえて4つ打ちを採り入れたという“JOY JOY JOY”と“SEXY BODY”という2枚のシングルでの冒険を経て、『Let It V』は幅広いリズム・パターンと多彩なプロダクション、古今東西の音楽へのオマージュが散りばめられた作品になっている。これはまさに、彼らが語る現状に対するアンチテーゼであり、もっと自由に音楽を楽しむことの提案なのだと言っていいだろう。



雨が降らないと見えない虹もある

「今回のアルバムに関しては、ショウのソングライティング力の向上がすごくバンドにとってプラスになったと思います。作ってくる量もレヴェルも上がってて、これぐらい良い曲が最初から揃ってるといろいろ考えながら作れるんですよね。アルバムの長さは短めですけど、曲がたくさんあったうえでのこの長さなんで、すでに次のアルバムが見えてるぐらいの感じなんです」(オカモトレイジ、ドラムス)。

「前作は自分のなかで制約を設けて曲を書いていて、メロディーはブルース・マナーにできるだけ則って、リズムも自分のルーツのなかからいまの時代のビートに近いものを選んだりしてたんです。でも、今回はそういうルールや様式美的な枠を取っ払っても、ロック・バンドとして誇れるものを作りたいなって」(オカモトショウ、ヴォーカル)。

くるりの岸田繁がプロデュースしたオールディーズ風のロックンロール“HAPPY BIRTHDAY”、SOIL&“PIMP”SESSIONSのメンバーを迎えてスペシャルズばりのスカ・パンクを鳴らした“Let's Go! Hurry Up!”、真骨頂とも言うべきファンキーな演奏と明るいサビの対比が鮮やかな“Yah!!(ビューティフルカウントダウン)”など、ショウのソングライティングを軸に各々のプレイヤビリティーが結集した本作。4人ならではのオリジナリティーはより強固なものになっている。

「洋楽的なルーツに振り切って、フェチっぽい感じの音作りを追求することもできるとは思うけど、そこまで真摯にはできないというか(笑)、僕らは日本のロックや歌謡曲などももちろん聴いてきたので、洋楽的なオケの作り方になりきれない部分もあるんです。そのバランスはすごく考えて、シングルではわかりやすくしながら、アルバムではこだわるところはひたすらこだわりました」(コウキ)。

「60年代のアメリカン・ポップスの感じ、ビーチ・ボーイズ、フィル・スペクター、モータウンのサウンドを、バンドでもっとラフにやったらどうなるんだろうっていうのがひとつのテーマとしてあって。そこが日本の音楽とも通じるのではないかと思ったんです。“虹”に関してはナイアガラにまで手を出してるというか、大瀧詠一さんとフィル・スペクターへのオマージュぐらいの気持ちで作りました。多重録音もガッツリやって、一回プロトゥールスがフリーズしたんですよ(笑)」(ショウ)。

アルバムの実質的なオープニング曲“Kill Dreams”は、彼らも出演した海外のフェスで観た憧れのイギー・ポップをモチーフに自分たちの使命を見つめ直した、この1年の思いを凝縮したナンバーとなっている。

「イギー・ポップ自体はめちゃめちゃカッコ良かったんですけど、オーディエンスが全然盛り上がってなかったんですよ。イギーが目の前でパフォーマンスをしたら、みんな雷に打たれたように一瞬で虜になるはずだっていう、ある種の幻想を目の前で打ち砕かれたんです。それがすごくショックで、〈自分たちの夢を殺してでも次に行くしかないのか?〉って思いながら作っていたので、最初はもっとパソコンの音なども入れてて。結局は自分たちが耐えられなくなってしまって、アナログ・シンセをいっぱい使ってます(笑)。それぐらいの気持ちから始まっているので、〈雨が降らないと見えない虹もある〉っていう“虹”がラストにあるのは、いい流れになったなと思います」(ショウ)。

玉石混交とも言うべきいまの日本のロック・シーンがV字曲線を描き、真に豊かな音楽文化を育んでいくことができるかどうか。『Let It V』という作品が、何らかの変化のきっかけになることを願う。



▼OKAMOTO'Sの作品を紹介。
左から、2010年作『10'S』『オカモトズに夢中』、2011年作『欲望』、2013年作『OKAMOTO'S』(すべてARIOLA JAPAN)

 

▼『Let It V』の先行シングル。
左から、『JOY JOY JOY/告白』“SEXY BODY”、OKAMOTO'Sが参加した山下智久の2013年のシングル“SUMMER NUDE '13”(ワーナー)、ハマが参加したももいろクローバーZの2013年のシングル“GOUNN”(スターチャイルド)

 

▼『Let It V』に参加したアーティストの作品を紹介。

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