溝口肇
眠れない夜に寄り添う音楽とは
最近テレビ、雑誌で良く目にするのは日本人の睡眠がちょっとおかしいというニュース。確かにストレスに満ちた現代生活では、正しい眠りを得るのは難しいのかもしれない。そんな時に出会ったのがチェリスト・作曲家である溝口肇の“FOR SLEEPLESS NIGHT”PROJECT。非常にユニークなこの企画、そして新しいCDについて伺った。
「きっかけとしては東日本大震災がありました。僕の家もかなり長く揺れて、その後不安な気持ちが続きました。また被災地を訪れたのですが、そこでも眠れないという方が多かった。そういう不安な気持ちを抱えて眠れない時に聴く音楽を書きたい、と思ったのが、このアルバムに繋がりました」
そもそも溝口が自分で音楽を書くようになったきっかけも、20代の時に事故の後遺症で眠れない日々があったからだ。
「ムチウチ症で眠れない日々が続き、自分で眠るための音楽を書こう、と思ったのが、僕の創作の原点なのです。だから眠るための音楽、というのは常に意識の中にありました」
今回のアルバムに収録された作品は、東日本大震災の後から創作が始まった。
「まず、基本的にはディレクションをしない、ということで曲作りを始めました。僕が基本コンセプトを作り、それを信頼出来る演奏家たちに向けてfacebookを通して投げかける。それぞれがそれに自分の音を付け加えてくれる。そんな形で次第に作品の形が出来上がって来ました。それを元に、あらためてアルバム用にスタジオできちんと収録を行って、音を作り込んで行きました。結果として様々なアーティストの想いがこもった音楽になっていると思います」
全12曲収録された音楽には、それぞれ個性的なタイトルが付けられた。「Northern Lights」はオーロラをイメージした作品で、その緩やかで神秘的な光の世界が表現されている。またブックレットには作品のイメージに繋がる物語(放送作家・今井栄一による)が掲載されているか、それを読みながら聴くのも、新たな世界を広げてくれるだろう。
「基本的には、眠れない夜にずっとかけっぱなしに出来る音楽、ちょっと眠ってしまい、起きた時にもまだ流れていて、それが邪魔にならないような音楽を目指しました」
と溝口。彼の優しい想いが伝わって来るような音楽でもある。常にCDプレイヤーに入れておいて、流しておきたい音楽だ。睡眠研究・睡眠医療の第一線で活躍する神山医師の監修も受けた。
「睡眠欲は人間の基本的な欲求だそうです。これを満たすのが大事と教えられました」
眠れない人もそうでない人も、このアルバムを使って、自分の生活リズムを見直してみよう。