インタビュー

クリープハイプ 『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』

 

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[ interview ]

いまやバンドシーンを代表する存在となったクリープハイプから、ニューアルバム『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』が届けられた。シングル“寝癖”“エロ”“二十九、三十”“百八円の恋”を含む本作には、バンドのリアルな状況を普遍的な楽曲へと結びつける、クリープハイプの独創性がさらに色濃く反映されている。

バンドの状態が良かったことに救われた気がしますね。自分たち自身で自分たちを救ってたというか(尾崎世界観)



2014年4月に日本武道館2daysライブを成功させ、5月にレコード会社移籍第一弾シングル“寝癖”をリリース。さらに8月から9月にかけて初の全国ホールツアー「八枚目でやっと!九枚目でもっと!」を行うなど、濃密な1年を送ったクリープハイプ。前作『吹き零れる程の、I、哀、愛』以来、1年5か月ぶりとなるニューアルバム『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』は、2014年における彼らの状況、そこで生まれた様々な感情がダイレクトに反映された作品となった。

尾崎世界観(Vo.&Gt.)「レコード会社を移籍する時期も大変だったし、2014年は<すごく良かったな>とすぐには思えないような年でした。でも、そこで学んだこともいろいろあるし、これから長くバンドを続けていくうえでは大事な年になったと思いますね」

長谷川カオナシ(Ba.)「こうやってアルバムが出せたことも、めちゃくちゃ嬉しいですね。踏んばらなくてはいけないことが多かったんですけど、ただガマンするだけではなく、今年の自分たちの作品を提示できたことはすごく良かったなって」

シングル“寝癖”、“エロ”、“二十九、三十”、“百八円の恋”のほか、別れの瞬間をどこか冷めた視点で描いた“2LDK”、似たようなバンドが増殖する現在のシーンへのアンチテーゼとも取れる“社会の窓と同じ構成”など、尾崎の鋭利なソングライティング・センスが存分に発揮された本作。このアルバムの根本的なテーマを指し示すのが、『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』というタイトルだろう。収録曲“大丈夫”の歌詞のなかにあるこのフレーズは、現在のバンドの状態を正確に捉えていると同時に、尾崎自身の人生観、人間観とも強く結びついているようだ。

尾崎「(他者に対して)<一つになれない>というより、そもそも一つになろうとも思ってないところもあるんですよ。自分にとってラクな距離を先に作ってしまうというか。でも、対峙することを諦めているわけでもないんですよね。だって、実際は二つでいるほうが大変じゃないですか、向き合わなくちゃいけないから。そうすることで、相手のことを分かろう、理解しようとしてるんでしょうね。それが<二つでいる>ということなのかなって。…まあ、そこまで切実に考えているかどうかは分からないですけどね。ただ、こういう言葉が出てくるっていうのはいいなって思うし、普段からこういうモノの見方で曲を作ってるような気もしますね」

 

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爆発的な推進力を持ったリズムが印象的な“そういえば今日から化け物になった”、ギターのアルペジオを軸に繊細なアレンジが施された“本当”など、さらに幅を広げたバンドサウンドもこのアルバムの魅力。目まぐるしく変化する状況のなかにおいても彼らは、しっかりと音楽に集中していたようだ。

長谷川「曲が出来たらみんなですぐに固めて、時間を置かずにどんどん録っていける状態だったんですよね。カタチになるまでのスピードが早かったし、良いものになったと思います。全体的にすごく尖ってるし、集中力も高かったんじゃないでしょうか」

小泉拓(Dr.)「レコーディング自体も好きになりましたね。前は<ライブとレコーディング、どっちが好き>って聞かれたら<ライブ>って答えてたんですけど、今回のレコーディングはすごく楽しかった」

小川幸慈(Gt.)「1曲1曲に集中することで結果的にいろんな曲調が表現できたと思うし、今回のレコーディングで得たことは、次に活かせると思います。いろんなことがありましたけど、曲を作ることに関してはすごく状態が良かったんじゃないかな、と」

尾崎「うん、バンドの状態が良かったことに救われた気がしますね。自分たち自身で自分たちを救ってたというか。あと、余計な力が入らなくなったんですよね、曲を書くときも。自分に出来ることが分かってきたので。それは諦めてるわけではなくて、ラクに攻められるようになったということなんだと思います」

 奥深く、生々しいストーリー性を備えた楽曲、聞き手の感情を強く揺さぶるボーカル、そして、ロックバンドとしての凄味を高い次元で共存させた『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』。どんなに知名度や人気を得たとしても、怒りや葛藤、憤りは消えることがなく、クリープハイプの音楽はどこまでも鋭さを増している。やはりこのバンドは信用できる――そんな実感が強く伝わってくる充実作だと思う。

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■Album…『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』 now on sale!!

■Songlist…
01. 2LDK
02. エロ
03. ボーイズENDガールズ
04. そういえば今日から化け物になった
05. 大丈夫
06. 百八円の恋
07. 本当
08. のっぺらぼう
09. 寝癖
10. 社会の窓と同じ構成
11.
12. 二十九、三十

■Live…

LIVE HOUSE TOUR 2015″一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう前編”
1月22日(木)  本八幡 The 3rd Stage
1月25日(日) 甲府 CONVICTION
1月29日(木) 東京 Zepp Tokyo
1月30日(金) 東京 Zepp Tokyo
2月03日(火) 大阪 なんばHatch
2月04日(水) 名古屋 Zepp Nagoya
2月07日(土)   新潟 LOTS
2月11日(水・祝) 福岡 DRUM LOGOS
2月13日(金) 長崎 DRUM Be-7
2月20日(金) 高知 キャラバンサライ
2月22日(日) 広島 BLUE LIVE
2月27日(金) 札幌 FACTORY HALL
3月01日(日) 青森 Quarter

HALL TOUR 2015″一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう後編”
3月21日(土) 千葉 市川市文化会館
3月28日(土) 岡山 倉敷市民会館
3月29日(日) 滋賀 びわこホール
4月03日(金) 福岡 福岡サンパレスホテル&ホール
4月05日(日) 静岡 清水マリナート
4月10日(金) 北海道 札幌市民ホール
4月12日(日) 宮城 仙台サンプラザホール
4月16日(木) 大阪 オリックス劇場
4月17日(金) 大阪 オリックス劇場
4月19日(日) 愛知 名古屋センチュリーホール
4月24日(金) 愛媛 松山ひめぎんホール・サブ
4月28日(火) 栃木 栃木県総合文化センター
5月07日(木) 東京 NHKホール
5月08日(金) 東京 NHKホール
5月10日(日) 長野 ホクト文化ホール・中ホール

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記事内容:TOWER+ 2014/12/10&1/10合併号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2014年12月03日 17:00

ソース: 2014/12/10&1/10合併号

TEXT: 森朋之