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Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)、自身初の単独来日公演が2年越しで実現

Billie Eilishの来日公演が実現した。本公演は、全米/全英含む全15ヶ国で1位を獲得した最新アルバム『Happier Than Ever』を携えた世界ツアーの日本公演となり8月26日に東京有明アリーナにて開催。チケットは発売後瞬く間に即完し、プレミア公演となった。当初2020年に予定していたツアーが今回ようやく実現され、Billie Eilishにとって大成功の初単独来日公演となった同公演のライヴ・レポートが到着した。

 

Billie Eilishは、観客に深呼吸をさせる。8月26日、有明アリーナ。即完だった単独初来日の終盤、20歳のスーパー・ポップ・スターは幸運にもその場に居合わせたファンたちに「スマホからいったん離れて、「今ここにいる」自分に集中して」と導いたのだ。なんという、大らかさ。アコースティックな歌ほど映えるソプラノの歌声、すべてを見通しているかのような碧眼と共に発するカリスマ性、走ったり寝転がったりジャンプしたりするたびに溢れる生命力。そういう目と耳で感じられるアーティストとしての度量の大きさもさることながら、人間、Billie Eilishはとてつもない大物だった。

2月3日から始まった「ハピアー・ザン・エヴァー・ワールドツアー 2022」はすでに全米29都市、ヨーロッパ15都市、アジア5都市で合計63公演を終え、アジア・ツアーの最終日だった東京は64公演目。残すはオセアニアのみである。2020年の3月に3公演だけ行い、パンデミックでキャンセルせざるを得なかった「ウェアー・ドゥー・ウィー・ゴー ワールドツアー」から約2年を経てのリベンジだ。今回も2月に予定されていたカナダの2公演や、前回は日程にあった上海や台湾が見合わされるなど、コロナ禍の影響がゼロだったわけでない。だが、同名の2ndアルバムでサウンドの幅を広げて音数を絞ったぶん、Billieの歌唱を全面に押し出したステージが観られた。ウィスパー・ヴォイスが印象的なシンガーだが、コーラス部分で身体の芯から奏でるヴォーカルはちょっと類がなく、鳥肌が立った。筆者の体感としては、シンギング・ボウルの倍音に近かった。

バンドはドラマーのAndrew Marshallと、Billieの楽曲のほとんどを一緒に手掛けるの兄のFinneas O'Connellのみ。あらかじめ録音した音に楽器の音を重ねていたが、ドラムの音が力強く十二分にライヴ感があった。予想以上に「スーパーお兄ちゃん」ぶりを発揮していたのが、Finneasだ。ギターとベースを持ち替え、キーボードを弾き、バック・コーラスをも務める。彼自身、アルバムをリリースしているシンガーだが、妹のツアーではサポートに徹していた。Billieの音楽的なバックボーンのみならず、精神的な安定はこの4歳上の兄なくしては成り立たない。

セットリストは2015年の“Ocean Eyes”から、最新シングル『Guitar Songs』からの“The 30th”までバランス良くパフォーマンスした。2ndアルバム収録の“Oxytocin”にデビュー前の“Copycat”を入れ込むなど、1時間15分のセットで無駄がない。メイン・ステージ後方が高くなっている傾斜を登ったり降りたり(寝転がったり)し、センター・ステージも効果的に使って緩急をつける。バックドロップも抽象的なヴィジュアル・アートから、「どこから持ってきた?」と思った古い質感のダンスする4組の「脚」やメリーゴーランドなど、ノスタルジックな映像を使って飽きさせない構成は完璧。無造作なツインテールを途中で解いただけで、「Cry Baby」と描かれたコミック風の女の子のピンクのTシャツとピンクのショート・パンツを着替えることもなかった。その潔さときたら。

Billie Eilishは、社会的なコメントをしっかり発するアーティストだ。今回も、アクティヴィストとしての顔もしっかり伝えた。コンサートが始まる直前に流れた気象変動についてのメッセージが英語だけだったのは少し残念だが、プラスティック・ゴミを減らすためにマイボトルの持ち込みを奨励し、ビニール傘はNGであったのも考えるきっかけになった点で意味があっただろう。“All The Good Girls Go To Hell”に合わせ、BLMや反戦デモ、地元であるカリフォルニア州の山火事を伝えるビデオを流すひと幕も。だが、決して説教臭くはならず、MC時の言葉づかいはむしろ穏やかだ。海外に比べ、日本の観客は静かで有名である。加えて、新型コロナウイルスの感染者数を鑑み、「なるべく一緒に歌わない」マナーも浸透している。Billieは「いやー、静かだね。緊張するかも」とポロッと本音をこぼしたあと、「You guys are so sweet(みんな、すごく優しいよね)」と言い換えたのだ。「みんなおしゃれで、マジでびっくりしたよ!」とも。海外旅行で来日した人の口からわりと聞くコメントではあるが、ステージ上で言っているアーティストは初めて見た。「Billieって人柄もかわいい」と驚いた。

大ヒット曲“Bad Guy”で飛び跳ねたあと、ラストの“Happier Than Ever”へ。「あなたがいないほうが私はずっと幸せ」と歌う、暗めさとポジティヴさが同居する曲だ。「I don't relate to you(あなたには共感できない)」と歌うコーラスで、アリーナいっぱいのファンの気持ちをひとつにしたあたりが孤独を共有する時代のアイコン、Billie Eilishらしかった。

文:池城美菜子

 

▼リリース情報
Billie Eilish
来日記念盤
『Happier Than Ever』
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カテゴリ : タワーレコード オンライン ニュース

掲載: 2022年09月01日 11:50

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