あからさまなフォロワーこそ多くないが、ここでも別格扱いなのはアル・グリーンだ。例えばトニ・トニ・トニ“Thinking Of You”やディアンジェロ“Send It On”は明白なアルへのオマージュだったと言えるし、ハイ・サウンドごとスタイルを継承したアリもいた。また、単にカヴァー例を拾ってもアルの楽曲は一人歩き度が高く、古くはブライアン・フェリーの“Take Me To The River”やオレンジ・ジュースの“L-O-V-E”あたりが名高いし、近年だとSteel Love World Wide、paris match、レマーというタイプのまったく異なる3組が近い時期に“Let's Stay Together”をカヴァーするなんて珍事もあった。サンプリング例も膨大で、特に超定番ネタになっている“Love And Hapiness”を用いたエリック・サーモン“Love Iz”や“The Letter”ネタのノトーリアスBIG“Long Kiss Good Night”(RZA制作)あたりは忘れがたい。
ハイ音源全体のサンプリング例なら、シル・ジョンソン“Could I Be Fallin' In Love”がレイクォン“Heaven And Hell”に、同じくシルの“I Hate I Walked Away”がRZA“Show U Love”に、アン・ピーブルズ“Troubles, Heartaches & Sadness”がRZAの“Throw Your Flag Up”とGZAの“Shadowboxing”に……といったところが著名か。ウータン系がやたら目立つが、泥臭さと粋な洗練性が融和したハイのグルーヴはRZAのお気に入りなのだろう。
そんなハイ・サンプル曲の最高傑作として推しておきたいのは、アン・ピーブルズ“I Can't Stand The Rain”を用いたミッシー・エリオットのデビュー曲“The Rain”だ。原曲のミニマルな〈雨音〉を変態的にループする術はティンバランドの真骨頂だった。
最後に、ハイ・サウンドの生みの親でもあるウィリー・ミッチェルがハイ離脱後に手掛けたプロデュース/アレンジ作品の多くでも往年のハイ・サウンドは聴け、その魔法を授かった連中にはキース・リチャーズやボズ・スキャッグス、オラン“ジュース”ジョーンズ、ORITOらが挙げられるということを付け加えておこう。
▼文中で登場したアーティストのアルバム。