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第24回 ─ スタックスの遺産(その3)

ESSENTIALS 魂が震える名盤たち その2

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/06/28   18:00
ソース
『bounce』 288号(2007/6/25)
テキスト
文/JAM、出嶌孝次、林 剛

SHIRLEY BROWN 『Woman To Woman』 Truth(1974)
スタックス末期を飾ったレディー・ソウルが、このシャーリー・ブラウン。ジム・スチュアートとアル・ジャクソンが制作にあたった本作は初期スタックスの良心を取り戻したような南部スタイルで、アレサ・フランクリンに通じるふくよかな歌いっぷりがいい。スタックス起死回生の一曲となった表題曲は、後年デス・ロウのジュウェルやジャグアー・ライトにもカヴァーされた不倫ソングの定番だ。
(林)

THE SOUL CHILDREN 『Genesis』 Stax(1972)
ハーモニーを聴かせるというより、男性2人と女性2人が織り成す独特の歌世界には4つのソロ・ステージが複雑にコラージュされたような趣きを覚える。スタックスに残る4枚のアルバムのうち、そんな彼らの〈凄み〉が最大限に詰め込まれているのがこの3作目で、サザン・ソウルの核心とも言うべきレパートリーが次から次へと登場。まさしく〈ソウル界の至宝〉を見る思いである。
(JAM)


THE SWEET INSPIRATIONS 『The Estelle, Myrna And Sylvia』 Stax(1973)
アトランティック時代にはシシー・ヒューストンがいたゴスペル出身の女性ヴォーカル・グループの移籍盤。ここではシシーが抜けてトリオ編成となったが、ふたたび南部録音に戻っている。プロデュースはデヴィッド・ポーターらで、しっとりとしたバラードと威勢のいいアップを器用に歌いこなす。以前のようなディープさが薄まったぶん、エモーションズのような可憐さが魅力となった。
(林)

『THE TEMPREES 3』 We Produce(1975)
結成当初は後にバーケイズに加入するラリー・ドッドソンもいたテンプリーズ。これは傍系レーベルのウィ・プロデュースの顔役であった彼らの3作目で、地元メンフィスのミュージシャンを核としながらフィリーのMFSBの面々を起用したという異色作だ。もとよりスウィートな歌ゴコロを持ち味としていた彼らが、フィリーの軽やかなリズムに乗って颯爽と駆け抜けていく感じがたまらない。
(林)

『Wattstax : Highlights From The Soundtrack』 Stax 
本文でも触れたドキュメンタリー映画(73年公開)のサントラで、これはオリジナルLPなどから映画のハイライトとなる場面の曲を抜粋したもの。キム・ウェストンが歌う黒人国歌“Lift Every Voice And Sing”、エモーションズが教会で歌った“Peace Be Still”、そしてトリを務めたアイザック・ヘイズによる“Theme From Shaft”まで、音を聴いただけでもあの黒い熱気がビシビシと伝わってくる。
(林)

『Stax Of Funk Vol. 2 : More Funky Truth』 BGP 
スタックスの編集盤は各国からさまざまな形で出ているが、このシリーズはアルバム未収曲などをモリモリ収録。ケイティ・ラヴやスチュ・ガードナーらが醸したグリッティな黒さもまた、スタックスの育んだ得難い個性だったことがわかる。レッキング・クルー“Bump And Boogie”やルディ・ロビンソン&ザ・ハングリー・ファイヴ“Got It Together”など、ディープ・ファンク文脈で評価可能な楽曲の充実ぶりもBGPらしい。
(出嶌)