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第34回 ─ 永遠のファンク30発!

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2008/09/11   23:00
ソース
『bounce』 302号(2008/8/25)
テキスト
文/JAM、出嶌 孝次、林 剛

永遠のソウル・パトロールを続ける本連載。第30回の節目となった前回は時代を超えて聴き継がれるべきソウル・アルバム30選をお届けしましたが、今回は同趣向で〈ファンク〉の30枚をご紹介! 新しいスタンダードはこちらですよ!!

 ファンク! 軽く予告していたとおり、今回は前々号のソウル編に続いて、ファンクの〈新しいスタンダード30枚〉を勝手に選定してご紹介します。ただ、単純に何をもって〈ファンクの作品〉とするかは人それぞれ。クレオールで〈匂い〉を表す俗語〈フォンク〉から転じた言葉ということもあって、いにしえのニューオーリンズ音楽こそがファンクそのものだとする見方や、ファンキー・ソウル時代のJBもファンクに含むという考え方もあるでしょう。ただ、ここではJBやミーターズがリズミックなフォーミュラを完全に確立し、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの登場も見た60年代末以降の、ソウルの一要素として派生していった〈ファンク・ミュージック〉を紹介していくことにします。

 そんなわけで、今回も選盤の基準はいくつか設けてみました。上述したように68年頃~83年までのリリース作品のなかから/現在でも比較的入手が容易なオリジナル・アルバムを/1アーティストにつき1枚のみ、というルールで選出しています。また、連載の主旨に合わせて〈歌モノ〉としての魅力という点も重視しました。83年まで、というのは単にいまから25年前という区切りだけで決めたものですが、黒人音楽の一般化やサウンドのテクノロジー化に伴う洗練と音楽性の変質、ヒップホップの台頭、といった事象が明確になっていった転換期でもありますね(翌84年にはプリンスの『Purple Rain』が登場しています)。

 ロック・ファンにも好まれるJB、スライ、Pファンク、より大衆的な文脈で名を成したEW&Fやシックといった名前を除けば、ここで紹介したタイトルはソウル編の30枚以上に認知度の低いものかもしれません。一方、近年では音楽ファンの間ですら、ディープ・ファンク文脈の発掘盤や現代のジャズ・ファンク作品こそがファンクそのものであるという偏った認識が蔓延しているようです。ゆえに今回も敷居が低くて奥の深い〈入口としての30枚〉という意図はありつつ、少なく古色蒼然とした重箱の隅的なJBフォロワーよりは〈マストな30枚〉であるように考えて選盤しました。ともかく、誰にでも良さがわかるこの30枚を入り口に、皆さんがもっと多くの名盤に出会えますように!
(出嶌孝次)

1.FUNKADELIC
『One Nation Under A Groove』
Warner Bros.(1978)
ファンクが肉体的な音楽であると同時に、ある種の意志を体現する音楽である……と言い切ってしまうならば、妄想を思想にまで昇華しながらフィジカルなグルーヴを追求したPファンク勢が、そこから本作が1位に選出されるのは当然だろう。まさに〈ファンク国歌〉と呼びたい表題曲は、数曲分のキャッチーなメロディーを満載して執拗にグルーヴへの忠誠を誓わせる、ジョージ・クリントンならではの大曲である。もちろん、そのファンク世界は偏狭なものではなく、ロックもスウィート・ソウルもジャズもカリプソもブルースも社会風刺もユーモアも下ネタもイヤミも最初から組み込まれているのだ。こんなにソウルフルで愉快なレベル・ミュージックはない。
(出嶌)

2.RICK JAMES
『Street Songs』
 Motown(1981)
ファンクは猥雑、ファンクはクール、ファンクは肉感的、ファンクはスケベ……ときたらスターの輝きと天才性を放っていたこの時期の彼はまさにファンクそのものだった。いまさらMCハマー“U Can't Touch This”のネタとして笑いを誘うわけでもない“Superfreak”も、ソリッドに疾駆する“Give It To Me Baby”が最強。口の周りをベトベトにして歌うバラード“Fire And Desire”もヤバい。
(出嶌)

3.EARTH, WIND & FIRE
『Spirit』
 Columbia(1976)
クリエイティヴィティーが破格なら、コマーシャルなスタンスも大胆不敵。そんな両側面が見事なまでにぶつかり合った名盤。彼らが後に創作の軸とする〈アフリカ回帰〉のコンセプトも音楽に彩を与えてはいるが、このアルバムの凄さはとにかくレパートリーの粒立ちの良さに尽きる。ヒット・シングルの“Get Away”をはじめ、“Saturday Night”“On Your Face”と、特にファンク曲は敵ナシ。
(JAM)

4.SLY AND THE FAMILY STONE
『Fresh』
 Epic(1973)
作品のひとつひとつが革命的だった、スライ・ストーン率いる人種混合バンド。ベイエリア・ファンクならではのミクスチャー感覚の表出は『Stand』や『There's A Riot Goin' On』でひとまず極め、それらに続く本作では黒人音楽独特のウネるようなファンク・グルーヴをもっと前面に押し出している。“If You Want Me To Stay”などにおける〈洗練された泥臭さ〉の何とクールなことか。
(林)

5.ZAPP
『Zapp』
 Warner Bros.(1980)
“More Bounce To The Ounce”が瞬時に音楽シーンへ与えた衝撃を改めて思う。ジョージ・クリントン&ブーツィー・コリンズに見初められたロジャー・トラウトマンとその一味が、彼らのバックアップを受けて世に放ったトーク・ボックス一辺倒のヘヴィー・ファンク。この一曲で変わったこと、この一曲が変えたこと……その魔力はむろんアルバム全編に及んでいる。
(JAM)

6.CAMEO
『Knights Of The Sound Table』
 Casablanca(1981)
極彩色に輝くリズム・アレンジ、速射砲を思わせるホーン・セクション、そして目眩く万華鏡が如きヴォーカル・パート。とにかくキャミオが演じるファンクは、他とは等級があきらかに違っていた。そのピークを形成したのがこの通算7作目で、ヒットを記録した“Freaky Dancin'”はもちろん、幕開けを飾る“Knights by Nights”など、ファンクはどれも凄まじい。
(JAM)

7.THE ISLEY BROTHERS
『3+3』
 T-Neck/Columbia(1973)
ロナルド・アイズレーを含む年長の3兄弟に従兄弟を含む年少者3人が加わり、文字どおり〈3+3〉として再出発を果たした時のアルバム。6人体制となった勢いに乗じたかのようなグルーヴィー・ファンク“That Lady”を筆頭に、“Summer Breeze”などのポップス曲カヴァーにもソウルフルなヴァイブを注ぎ込んで邁進する、新しきファンクの道を示した記念碑的な一枚だ。
(林)

8.JAMES BROWN
『The Payback』
 Polydor(1973)
存在そのものがファンクだったJB。よって〈この一枚〉を選定するのは難しいが、ニュー・ソウル運動にも同調したこの大作は、怒号のような声を放つ定番ネタの表題曲を筆頭に、ファンキー・ソウル期を経て〈ファンクの王者〉となったJBが成熟したファンクのありようを見せつける。ジャボ・スタークスらを含むJB'sの、力強くタメの利いた演奏も凄い。
(林)

9.OHIO PLAYERS
『Fire』
 Mercury(1974)
重量感のあるファンクと甘く官能的なスロウの両刀使いで人気を集めた、オハイオの代表グループ。これは70年代中期に傑作を連発していた頃の一枚で、全米No.1ヒットとなった表題曲など、猥雑だがスマートにキメる彼ら流儀のファンクはここでひとつの完成を見たと言える。お馴染みのセクシー・ジャケに呼応したかのようなシュガーフットの粘着ヴォーカルも絶好調。
(林)

10.CHIC
『Risque』
 Atlantic(1979)
ナイル・ロジャースの革新的なリズム・ギターとバーナード・エドワーズの中毒性たっぷりなベースラインによって、ディスコ文脈におけるファンクの最高到達点を示したシック。シュガーヒル・ギャング“Rapper's Delight”の元になった“Good Times”を収め、それには劣るものの“My Forbidden Lover”“A Warm Summer Night”といった名曲群で振り幅をも示した本作はその極みだった。
(出嶌)