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第49回――後ろから前からアイズレー

アイズレー史の流れと、まず聴くべき名盤たち――(1)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2011/02/18   13:45
更新
2011/02/18   13:45
ソース
bounce 328号 (2010年12月25日発行)
テキスト
文/林 剛、出嶌孝次

 

【1】T・ネック設立(69~72年)

 

69年初頭、モータウンを抜けたアイズレー3兄弟(年長組)は、ブッダの配給で自主レーベルのT・ネックを再興した。同時に、ブラック・パワーを叫んでいたJBらに刺激を受けたのか、〈ヴォーカル・グループ〉からメッセージ性を持った〈ファンク・バンド〉に変身。ヘヴィーでソリッドなリズムにブラスが応え、ゴスペルに根差したヴォーカルで力強く歌い上げるというスタイルで“It's Your Thing”の大ヒットをものにする。ここには後に正式加入する年少の3人も参加。兄弟の結束ぶりは69年作『The Brothers: Isley』のタイトルにも表れていたが、粗削りなファンク感は70年の『Get Into Something』でいったん影を潜め、今度はニュー・ソウルのブームに同調しながらフォーキーな感覚を強めていく。ジェイムズ・テイラーらシンガー・ソングライター系のロック~フォーク曲を取り上げた『Givin' It Back』(71年)はアイズレーズの音楽に対する柔軟さや貪欲さを示す一枚だが、媚びた印象がないのはゴスペルが基盤だという姿勢を崩さなかったからだろう。こうして時代の空気を吸い込みながら、彼らは〈3+3〉のフォーメーションを確立し、さらに飛躍していく。*林

 

『It's Our Thing』 T-Neck/Buddah/ソニー(1969)

ファンク・バンドとしてのスタートを飾った、T・ネックでの第1弾アルバム。大ヒットした重厚で無骨なファンク“It's Your Thing”など、スライやJBに影響を受けたことがよくわかる内容だが、ドゥワップの流れを汲むヴォーカル曲があったり、ラテン/ジャズの要素も垣間見せるゴッタ煮感は、NYで音楽修業を積んだ彼らならではの個性だろう。*林

『Brother, Brother, Brother』 T-Neck/Buddah/ソニー(1972)

ニュー・ソウル全盛期に出され、結果的に後のメロウ&グルーヴィーなアイズレー・マナーの先駆けになった一枚。キャロル・キングがマーヴィン・ゲイのメッセージに着想を得て書いた表題曲のカヴァーも良いが、ここではアヴェレージ・ホワイト・バンドにも歌われた軽やかなファンク“Work To Do”のような自作曲の逞しさが一段と光る。*林

 

▼関連盤を紹介。

左から、アイズレー・ブラザーズの69年作『The Brothers: Isley』、70年作『Get Into Something』、71年作『Givin' It Back』(すべてT-Neck/Buddah/ソニー)

 

【2】黄金の〈3+3〉時代(73~79年)

 

ファンク・バンドとしてのスタイルを確立したアイズレー兄弟たちは、73年作のタイトル『3+3』が示すように正式に6人体制となり、T・ネックの配給をエピック/CBSに変えて新たなスタートを切った。基本姿勢はこれまでと変わらないが、同作と続く『Live It Up』(74年)でロバート・マーゴレフとマルコム・セシルをシンセ・プログラマーに起用したことも手伝ってか、サウンドの洗練度がアップ。もちろんそれにはクリス・ジャスパーがシンセを使いはじめたことも大きく影響していて、完全に3+3のメンバーだけで演奏した『The Heat Is On』(75年)が登場した頃には、アーニーの表現力豊かなギター、マーヴィンの太く滑らかなベース、ロナルドの甘美な(だけではなくファンク曲では荒々しい)ヴォーカルが互いに自己主張し合いながら強固な一体感を見せていく。ファンクにメロウネス、時に『Harvest For The World』(76年)の表題曲のようなアコースティック・グルーヴと、緩急をつけながら出されたシングルは大半がR&BチャートのTOP10圏内にランクイン。78年の『Showdown』、79年の『Winner Takes All』ではディスコの流行と向き合いながらもアイズレー流ファンクを貫き、さらに都会的な洗練を加えて80年代へと向かっていくのだった。*林

 

『3+3』 T-Neck/Epic/ソニー(1973)

いわゆる〈3+3〉体制での初アルバムは、アーニーのギターが炸裂する64年曲のリメイク“That Lady”で幕を開け、軽快な“If You Were There”などの自作曲とシールズ&クロフツ“Summer Breeze”のようなポップス・カヴァーを織り交ぜてキャッチーに展開。従来のクロスオーヴァー志向を打ち出しつつ、コッテリ黒々としたグルーヴでまとめ上げた快作だ。*林

『The Heat Is On』 T-Neck/Epic/ソニー(1975)

初めて全米チャートの首位を奪った〈3+3〉時代の最高峰。6曲すべてが長尺のパート1&2で構成され、猛進する反骨ファンク“Fight The Power”を入口に、アーニーのジミヘン直伝ギタリズムが糸を引く表題曲、独特の浮遊感に溢れた“For The Love Of You”“Make Me Say It Again Girl”のようなスロウまで、緩急自在なグルーヴの渦に……いろんな汗が出ちゃう。*出嶌

『Go For Your Guns』 T-Neck/Epic/ソニー(1977)

一定の〈型〉が出来上がった時期の一枚ながら、6人の勢いは様式美の追求では終わらない。激重なベースがヤバい弩級ファンク“The Pride”に始まり、ネタ人気も高い哀愁メロウ名曲“Footsteps In The Dark”に歩を進めればあっさり夢中にさせられるはず。アーニーのギターがサンタナばりに泣きまくる幻想的なスロウ“Voyage To Atlantis”など楽曲も粒揃いだ。*出嶌

 

▼関連盤を紹介。

左から、アイズレー・ブラザーズの74年作『Live It Up』、76年作『Harvest For The World』、78年作『Showdown』、79年作『Winner Takes All』(すべてT-Neck/Epic/ソニー)

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