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第57回――ベティ・ライト

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2012/01/25   00:00
更新
2012/01/25   00:00
ソース
bounce 339号 (2011年12月25日発行)
テキスト
文/林 剛


マイアミで生まれ育った、元祖インディペンデント・ウーマン! 10代で天才少女としてデビューし、現在は地元ヒップホップ・シーンともリンクしながら裏方として活躍するベティ・ライト。11年ぶりの新作をきっかけに、その魅力を振り返ってみよう!



アル・グリーンやブッカー・T・ジョーンズといったソウル・レジェンドを黄金期のスタイルでリヴァイブさせたルーツが次なるお相手に選んだのは、マイアミ・ソウルの女帝、ベティ・ライトだ。両者の共同名義作となる『Betty Wright: The Movie』は、ベティの人生を映画に見立てた自伝的内容。制作にはパートナーのアンジェロ・モリス、ゲストにはスヌープ・ドッグやリル・ウェイン、ジョス・ストーン、レニー・ウィリアムズらの名前も並ぶ。確固たる意志とスタイルをキープしながら時流にしなやかに溶け込んできたそのキャリアは、確かに一本の映画になるほどで、残した作品群も傑作揃いなのだ。

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53年、フロリダ州マイアミで生まれたベティ・ライトは、3歳からエコーズ・オブ・ジョイというファミリー・ゴスペル・グループで歌っていたとされる。そんな彼女が世俗音楽の世界に入ったのは13歳の時。ラジオ番組の〈曲当てクイズ〉で優勝したベティは、その賞品を貰いに向かった地元のレコード店で曲を口ずさんでいたところプロデューサーのウィリー・クラークに声をかけられ、彼とクラレンス・リードの制作で地元のディープ・シティにシングルを吹き込むのだった(“Good Lovin'”などは、現在ニュメロの編集盤『Eccentric Soul: The Deep City Label』で聴くことができる)。これはヒットしなかったが、続いて68年にアルストンに移って放った“Girls Can't Do What The Guys Do”が全米でヒット。可憐にしてディープな歌声はたちまち評判となり、71年にはパンチの効いた声が印象的な“Clean Up Woman”の大ヒット(R&B2位/ポップ6位)が生まれ、これがベティのシグネチャー・スタイルとして定着するようになる。直訳すれば〈掃除婦〉となる同曲は暗にセクシャルな意味も孕んでいるのだが、以後もベティは“Baby Sitter”“Secretary”など、働く女性をテーマにした曲を歌っていき、時にキワドイ歌詞も織り込みながら、女性としての主張を、あくまでエレガントに歌い上げていく。10代後半〜20代前半のベティにこうした曲を歌わせたクラーク&リードも大胆なら、これにあっさりと応えたベティもたいしたもので、こうした自己演出力の高さは、IQが超人並みの167という頭脳を持つこととも関係しているのかもしれない。

70年代中期、アルストンを傘下に収めたマイアミの名門TKがディスコの波に乗りはじめると、ベティもアラン・トゥーサンが書いたスカ風の“Shoorah! Shoorah!”などに挑戦。そうしたなか、自身もペンを連ねたファンキー・チューン“Where Is The Love”が75年のグラミーで〈最優秀R&Bソング〉部門を受賞し、これに自信をつけたのか、70年代後半からはセルフ・プロデュースにも乗り出していく。ピーター・ブラウンを発掘し、彼のヒット“Dance With Me”(78年)に参加したことは、後年ジョス・ストーンの後見人となり、それを機に裏方/客演仕事を増やしていく彼女の出発点だったと、いまにして思う。

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TKが失速しはじめた80年代初頭にはエピックに移籍し、スティーヴィ・ワンダーに制作を仰ぐなどして2枚のアルバムをリリース。続いてインディーに籍を移した彼女はレゲエなどのカリブ音楽とも連関を強めていき、80年代後半には自身の愛称を冠したプロダクション/レーベル=ミス・Bを設立している。そこでの第1弾『Mother Wit』(87年)は、黒人女性アーティストが自主レーベルから出したレコードとしては初めてゴールド・ディスクを獲得した。ビッチな振る舞いのなかに垣間見せる知的で自立した態度。こうしてシスターたちの琴線をくすぐりながら、ベティはミス・Bを軌道に乗せていく。後にエリカ・バドゥやアンジー・ストーンが自作にベティを招いたのも、彼女のそうした部分に共感していたからなのだろう。

ディープでモダンな21世紀型マイアミ・ソウルを聴かせた2001年作『Fit For A King』以降はアルバム・リリースこそ途絶えるが、グロリア・エステファンやジェニファー・ロペスらの作品にバック・ヴォーカルで参加し、ジョス・ストーンのデビューにも貢献。また、P・ディディのTVオーディション番組「Making The Band」ではヴォーカル・コーチを務め、ダニティ・ケインの育成にも尽力した。客演もロイ・エアーズやリル・ウェインなどさまざまな方面から引っ張りダコで、特にニーナ・スカイやジャッキー・O、トリック・ダディといったマイアミの現行アーティストたちからのラヴコールは、ベティの地元における信望の厚さを伝えた。一方で、そんな彼らと渡り合えるほどのベティの懐の深さにも感心したものだ。

そうしたなか、約10年ぶりに発表されたのが、今回の新作『Betty Wright: The Movie』である。バックを担うルーツとはすでにジョス・ストーンのデビュー盤で同席し、今年のグラミー賞〈ベスト・トラディショナルR&Bヴォーカル・パフォーマンス〉にノミネートされた“Go!(Live)”でも共演済み。軽快なギター・リフやリズム・ボックス風のパーカッシヴな音色など、冒頭の“Old Song”からマイアミ・ソウルの作法を究めたルーツの手腕が光る一方で、ベティはヴェテランから若手までのR&Bスターの名前を読み上げて新旧のR&Bが地続きであることを謳い、自身の立ち位置を改めて示してみせる。素晴らしい監督と脇役に囲まれ、粋な展開を見せる〈ベティ・ライト物語〉。いまのベティにはオスカーが手渡されてもいいのかもしれない。



▼ベティ・ライトの参加作品を一部紹介。
左から、エリカ・バドゥの2000年作『Mama's Gun』(Motown)、ニーナ・スカイの2004年作『Nina Sky』(Universal)、キーシャ・コールの2007年作『Just Like You』(Geffen)

 

▼ベティの参加作品。
左から、リル・ウェインの2008年作『Tha Carter III』(Young Money/Cash Money/Universal)、ナズ&ダミアン・マーリーの2010年作『Distant Relatives』(Universal Republic)

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