NHK「現代の音楽」シリーズ第5弾!
〈クラシック音楽〉が西洋ヨーロッパで生まれ数百年の歴史を有するのに対し、日本がそのクラシック音楽に目を向けたのはここ百年にも満たない。しかしその時間の中で日本の音楽は、数百年の歴史に決して劣らない偉大なる足跡を数々残している。
2011年7月より、ナクソス・ジャパンからリリースされたシリーズ『NHK「現代の音楽」アーカイヴ』はその足跡を我々に提示してくれる。このシリーズは日本を代表する作曲家たちの音楽の中でも初演や肉声解説など貴重な音源をまとめた、日本の文化遺産とも言うべきシリーズだ。今まで武満徹や矢代秋雄など8人の作曲家を取り上げ、2012年3月にはいよいよ第5弾として『松平頼暁』と『林光』が登場した。
松平頼暁は大作曲家・松平頼則の長男として生まれるものの、父とは対照的に前衛的手法を早い段階から取り入れた。特に「十二音技法/セリエリズム」や 「ピッチ・インターヴァル技法」を行なったとして有名である。そんな彼の作品は60年代から70年代にかけて創作された室内楽曲を中心に5曲収録されている。彼が目指した「情念に拠らない芸術」らしい確固たる構造を有しながらも何か心を揺さぶる音楽を感じずにいられない。特にテープ音楽 《アッセンブリッジス》を聴いたあの昂揚は忘れられない。
林光。惜しくも今年の1月に亡くなったことが悔やまれる。日本語の可能性を追求し数々の声楽曲や管弦楽曲を残した稀代の作曲家。そのためかこのシリーズでは珍しく声楽中心でまとめられている。彼の代表作 『原爆小景』より 《水ヲ下サイ》も収録され、この稀代の作曲家の姿を捉えるのにふさわしい盤である。声楽曲も然る事ながら作曲者本人の初演による 《ピアノ・ソナタ》は鮮烈な名演である。
さて現在このシリーズは今後、一柳慧と石井眞木がリリースされることが決定している。ますますこの偉大なる日本の足跡から目を離すことが出来ない。