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インタビュー

これを聴いて彼女は素晴らしいメロディーセンスを手に入れました!!

 リリシストとしてのリリーのユニークな資質は、タブロイド紙に溢れる数々のお騒がせ発言や毒舌、中傷、自由奔放な行動を顧みれば一目瞭然。ところがそれとは逆に、まるで相反するかのようにドリーミーで、ガーリーで、上質なヴェルヴェットを思わせる極上メロディーに乗せて歌うのだから、これはもう確信犯というか、持って生まれた才としか言いようがない。なんでも父親はクラッシュのジョー・ストラマーと仲良しで、母親はスリッツのメンバーだったという彼女。音楽趣味は相当おもしろいというか、恐ろしく幅広い。クラッシュ、スクイーズ、T・レックス、ブロンディなどで音楽に目覚め、さまざまなポップソングを貪欲に吸収。ライヴではそういった70~80年代アーティストはもちろんのこと、キーンやクークスなど旬のバンドのカヴァーも披露すれば、ディジー・ラスカルやベースメント・ジャックス、ロビー・ウィリアムスらとも共演している。そのフットワークの軽さは、ブリトニー・スピアーズのヒット曲“Womanizer”をいち早く自己流でフォーキーに披露したことでも証明済み。ちなみにブリの新作『Circus』はかなり気に入っているようだ。また、ジェイ・Zのことも大好きだという彼女は、リリック面では非常に挑発的だし、ラッパー的だが、サウンド面となるといきなり乙女でメランコリックになってしまう。そのギャップがなんともおもしろい。新作ではグレッグ・カースティンの作ったコードに合わせて、歌詞とメロディーを同時に乗せていったようだが、美メロをクラフトするセンスに懸けては、若手のなかで頭ひとつ抜きん出ているのは明白だろう。昔ながらのメロディーメイク術を継承している点は、オヤジ好きという男の趣味と何となくカブッている気がしないでも……。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年02月26日 12:00

更新: 2009年02月26日 17:37

ソース: 『bounce』 307号(2009/2/25)

文/村上 ひさし

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