ハンバートハンバート(2)
いつも〈できちゃった作曲〉なんです
──ヴェテラン・フォーク・シンガーの方々から可愛がられている一方、オシリペンペンズをはじめとする関西ゼロ世代のミュージシャンとも繋がりがあって。そのあたりのスタンスも、ハンバートハンバートってすごく独特だと思うんですよ。
佐藤「オシリペンペンズとは、ほぼ同世代だし、仲良くしてます。大阪にラ・カーニャと同じぐらいお世話になっているライヴハウスがあって、そこは店主が女性なんですけど、すごく僕らのことを可愛がってくれて。それでペンペンズとか大阪のおもしろい人たちを紹介してくれたんですよ」
──オシリペンペンズとは対バンもやっているし、佐藤さんはペンペンズのヴォーカルの石井モタコさんといっしょにDJもやっていますよね。音楽性もまったく違うし、一見、合い交わらない感じがするんですけど。
佐藤「ああ。お客さんから見るとそうかもしれないですね。でもジャンルとか関係なく、本当に気が合うから仲良くなった感じで」
佐野「自分たちではまったくそういうことを意識したことがないんですよ」
佐藤「でも、そうやって仲良くしてくれる友達はすごくありがたいです。これからもずっと仲良くしてもらいたいですね。僕ら友達が少ないんで(笑)」
──(笑)。曲作りに関してお話をお伺いしたいのですが、佐藤さんは多作なほうですか?
佐藤「多作だったり、多作じゃなかったりですね。曲が出来る時は、しょっちゅう出来ますし、全然出来ない時は何か月も出来ないし。まちまちですね」
──曲のモチーフになるようなものは何かありますか?
佐藤「モチーフですか……うーん」
──モチーフじゃなくても、こんな時に曲が出来やすいとか。
佐藤「それは僕も知りたいんですけど、まったく分かんないんです。曲作りって自分のなかでは釣りに近いイメージがあるんですけど、でも、釣りは少なくとも釣れるスポットとかあるじゃないですか。曲作りに関してはそういうのが一切ないんですよね、僕の場合」
──たとえば前作『まっくらやみのにらめっこ』に入っている“国語”だったり、憤りが曲になるようなことも多いんですか?
佐藤「あー。それ、すごくよく言われるんですけど、別に僕は憤ってないんです(笑)。『まっくらやみのにらめっこ』を出してからというもの、〈毒のある歌詞こそがハンバートハンバートの魅力だ〉とか褒めてもらえるようになったんですけど、自分たちでは特に毒を入れようとか意識していないんですよ」
佐野「別に物申してないよね。物申せる立場でもないし(笑)」
佐藤「そうそう(笑)。僕はメッセージを曲に込めたりするっていうことは一切ないんです。日常のなかで思いついたことを歌にしているだけであって。曲を作るにあたって、斜に構えたような視線を意識して入れるようなことは全然してないんですよ。メッセージ・ソングみたいなものを作るつもりもないですし」
──どこかで、ポップじゃないといけないというか。
佐藤「そうです! やっぱりポップじゃないと意味がないんで」
佐野「前のアルバムでは、ちょっと怒りすぎたんだよね(笑)」
佐藤「ははは。でも、本当に怒ってるつもりは全然なくて、むしろ僕は〈笑いあり〉のつもりで作ったんですけど」
──毒気とユーモアが入り混じった歌詞の世界は、どこか高田渡とも相通じるものがありますよね。
佐藤「そこは知らず知らずの間に学んだんですかね。やっぱり、ずっと好きで聴いてきたから、どこかに影響が出てるんでしょうね」
──作詞作曲は、ほぼすべて佐藤さんが手掛けられていますが、佐野さんが歌うことは当然意識してるんですよね。
佐藤「それはもちろん考えてます……あ、やっぱり考えてないかもしれないです」
佐野「どっち(笑)!?」
佐藤「考えたりすることもあります。でも、結局、考えても考えなくても同じっていうか」
佐野「〈できちゃった婚〉じゃないけど、良成の場合、いつも〈できちゃった作曲〉なんですよ(笑)。〈こんなのできちゃった〉って持ってくることが多くて」
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