こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

南博

美しいメロディがあってこそ

南博トリオの新作『The Girl Next Door』は、南のお気に入りのスタンダードやジャズメンのオリジナル曲を集めて演奏した作品だ。彼にとってこのトリオのおもしろさとは何なのだろう。

「ひとつはベースの鈴木(正人)くんの、ノーブルな部分を引き出したい、ということですね。ドラムの芳垣(安洋)さんは非常に幅が広い人で、ノーブルな部分もあればアヴァンギャルドなところもある。彼はおとなしく4ビートを叩いても、どこかアヴァンギャルドな匂いがするんです。とにかく表現の幅が広い人なので毎回おもしろいんですよ。鈴木くんもだんだん音が野太くなってきて幅が広がってきたし、このメンバーを集めてよかったな、と思っています。2年間定期的にライヴをやっていますので、どんどんサウンドが固まってきているな、と実感しています」

さて、それでは南博が「トリオで演奏するスタンダード」を選ぶ基準は?

「きれいなメロディということです。何をもってきれいとするか、というのも形而上的な問題ですが(笑)、まずは聴きやすいメロディ、ということかな。モンクの《Bye-Ya》は、芳垣さんをフィーチュアしたいと思って選曲しました。そこに鈴木くんがどう絡むかな、と思ったら果敢にやってくれて、うれしかったですね。トリオは、美しい曲をちょっとだけアヴァンギャルドに遊んでみる、という危険なバランスが楽しいんです」

南博はこのトリオの他に、主にオリジナルを演奏する4人組、〈Go There!〉も主宰している。この二つのバンドの違いはどこにあるのだろうか。

「オリジナルを中心に演奏している『ゴー・ゼア』は、竹野(昌邦)くんのソプラノとテナーがとても美しいので、彼のサックスを前提として作っていますね。新作の録音も終わりまして、7月6日に【エアプレーン・レーベル】から出ることになっています」

美しいメロディをシンプルに、そしてちょっと冒険して演奏する、というスタンスは、実はとても〈深い〉ことなのかもしれない。

「以前はジャズのスタンダードをやる場合も、バークリー的なアレンジを施していたんですが、毎日キメキメのアレンジでスタンダードをやると、飽きちゃったりするんですね。それよりもヘッドアレンジにして、演奏するたびに違ったことになる方がおもしろくなってきました。とにかく元のメロディが美しいんだから、何を変える必要があるんだ、と思うようになりましたね。

《The Girl Next Door》はシナトラのヴァージョンが好きなんですよ。今さら何を言ってるんだと思われるかもしれないけど、シナトラはすはらしい歌手ですね。バンドも贅沢だし、アレンジャーも超一流だしね。美しいメロディというものが、いかにすばらしいものであるかを、最近特に強く思うようになりました」

『南博トリオ「The Girl Next Door」発売記念ライブ』
出演:南博トリオ Special Guest :丈青solo(from SOIL&"PIMP"SESSIONS)
5/9(日)会場:代官山・晴れたら空に豆まいて
http://www.graphic-art.com/minami/

掲載: 2010年05月06日 11:08

更新: 2010年05月06日 11:13

ソース: intoxicate vol.85 (2010年4月20日発行)

interview & text : 村井康司