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インタビュー

沢田穣治(NO NUKES JAZZ ORCHESTRA)

ジャズはいま、何を語り得るのか

昨年の大震災と原発事故以来、ツイッターなどで積極的に原発/被曝問題にコミットしてきたショーロクラブの沢田穣治が、満を持して、新プロジェクトをスタートさせた。ノー・ニュークス・ジャズ・オーケストラと命名されたそのプロジェクトの同名アルバムは、まず、ジャケットからしてすごい。福一原発から吹き上げる白煙が青い海を汚してゆく空撮写真には、沢田の怒りと祈りが凝縮されているようだ。そして、武満徹&谷川俊太郎《三月のうた》やおなじみ《満月の夕》、あるいは《奇妙なおもちゃ》や《突然のメッセージ》といった沢田のオリジナル曲からも、詳細な説明などなくとも彼の思いは明確に伝わってくる。

「何を表明しているかという問題が今回は一番大切だったので、明瞭かつインパクトのあるジャケットにしたし、まず曲名ありきだった」

冒頭とラストに置かれた《アズーロ》(青)が生命の象徴であることは明白だ。

「そう、人間の人生をイメージして作った曲。そしてそれは、地球の寿命のことでもある。誕生と最期。その中にいろんなドラマがある」

怒りと絶望に満ちた作品ではあるが、しかし希望の光も決して忘れてはいない。たとえばブラジルのヘナート・モタ&パトリシア・ロバートの参加した2曲など、鮮烈な生命の息吹を感じさせる。

「適材適所。ミナスが内包する生命の原初的力が溢れたこの2曲は、本作の救いにもなっている。彼らもそのことは十分に理解してやってくれた」

他にもノエル・アクショテやエリック・レニーニ、サイモン・フィッシャー・ターナーといった海外の鬼才が随所で異能を発揮し、沢田を中心とするコンボ〈グレイ・ゾーン〉(芳垣安洋、岡部洋一、馬場孝喜)を柱に、サックス・クァルテットのサキソフォビア、越川歩ストリングス・クアルテットなどがサポート。ジャズ・オケのスタイルに怒りと希望を託すその方法論は、チャーリー・ヘイデンのリベレイション・ミュージック・オーケストラを想起させたりもする。

「まさに。あのサウンドを真似するということじゃなく、本質的な部分で。音楽スタイルとしてのジャズというよりも、体制に対して何か言うというスタンス、変革の意志としてのジャズ、というのが、僕の世代だしね」

反原発以上に“子供たちの脱被曝”ということに重点を置いてきた沢田が次に考えているのは、子供をテーマにしたアルバム作りである。

掲載: 2012年09月18日 12:41

ソース: intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)

取材・文 松山晋也