【追悼】指揮者 飯守泰次郎 82歳
2023年8月15日、本場ドイツでオペラ指揮の研鑽を積み、とくにワーグナー作品の積極的な紹介などで日本音楽界に大きな貢献を果たした指揮者の飯守泰次郎さん(1940年9月30日 - 2023年8月15日)が、急性心不全のため亡くなりました。82歳でした。
飯守泰次郎さんは裁判官の父の赴任先である旧満州で生まれました。指揮者を志し、桐朋学園大学で故斎藤秀雄に師事。在学中よりオペラの合唱指揮などを務め、在学中の1961年7月1日、共立講堂での藤原歌劇団公演『修道女アンジェリカ』にて指揮者デビューしました。1962年に同大学を卒業すると、アメリカへ留学し、1966年のミトロプーロス国際指揮者コンクール、1969年のカラヤン国際指揮者コンクールでそれぞれ第4位入賞。ヨーロッパに渡り、1970年からはバイロイト音楽祭の音楽助手を務め、本場のワーグナーのオペラ上演を20年にわたって経験しました。またマンハイム、レーゲンスブルクなど各地の歌劇場で活動しました。
1972年に二期会オペラ創立20周年記念公演(11月28、29、30日、12月4日)でワーグナーの楽劇『ワルキューレ』を日本人で初めて指揮したことで芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。1993年から1998年まで、名古屋フィルハーモニー交響楽団常任指揮者。1997年より東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者(2012年4月から桂冠名誉指揮者)。2001年より関西フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者、2011年より桂冠名誉指揮者。2018年より2023年まで仙台フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者を歴任。また、2014~18年には新国立劇場の第6代オペラ芸術監督を務めました。
長年の楽壇への貢献により受賞歴も数多く、2000年度第32回サントリー音楽賞、2003年度第54回 芸術選奨文部科学大臣賞音楽部門(東京シティ・フィルとのワーグナー『ニーベルングの指環』全4作ツィクルス上演の功績により)、2004年11月紫綬褒章、2010年11月旭日小綬章、2013年03月第69回日本藝術院賞をそれぞれ受賞。2014年12月より日本芸術院会員。2015年1月には第56回毎日芸術賞(新国立劇場での舞台神聖祝祭劇「パルジファル」上演の成果により)を受賞しました。
ここに謹んで哀悼の意を表し、ご冥福を心からお祈り申し上げます。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
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カテゴリ : Classical
掲載: 2023年08月17日 12:00