注目の1枚!メッツマッハー~ショスタコーヴィチ:「ムツェンスクのマクベス夫人」
デノケの鬼気迫るカテリーナ、メッツマッハーの驚くべきコントロール能力が光る問題作の衝撃盤。
ショスタコーヴィチの最も先鋭的な問題作「ムツェンスクのマクベス夫人」。これが上演、録音されれば、必ず話題となりますが、非常に刺激的な新録音が登場しました。
2009年10月23日にウィーン国立歌劇場で行われたライヴで、現在人気・実力ともに最高のアンゲラ・デノケが主人公カテリーナを演じているのが注目。難技巧に加え、性的な場面や堕ちていく女の哀れさと怖さを体当たりで熱演、カテリーナ本人に思えてしまうほどの没入ぶりが見られ、後半は涙なしには聴けません。イケメンなだけのサイテー男セルゲイはミーシャ・ディディクが甘い声で好演。セクハラ爺のボリスはクルト・リドゥル。ネチネチとしたいやらしさでこれも好演。
ショスタコーヴィチがまだ国から弾圧を受ける前、自由な表現ができた時期の作で、かなり急進的かつ不道徳でもあり、性行為を音楽で描写する場面などスターリンを激怒させたと言われます。しかし、どの部分もまさに天才の筆で、聴く者を圧倒、あらゆる演出を音楽が凌駕してしまいます。
声楽陣の重要さはもちろんですが、「四幕の交響曲」とも称されるこのオペラは、オーケストラの役割の大きさも命です。そこはさすがメッツマッハー、驚くべき緊張感とコントロールで絶大な効果をあげています。もともとはキリル・ペトレンコが振る予定でしたが、キャンセルのためメッツマッハーが代役を務めたとのことですが、明らかにこちらが正解と断言できる凄さです。寒々とした陰惨さはトラウマになりそうなリアルさ。ロシア音楽に興味を持つ方は必聴の超強力盤です。
ショスタコーヴィチ:歌劇「ムツェンスクのマクベス夫人」
【演奏】
カテリーナ:アンゲラ・デノケ(Sop)
セルゲイ(下男):ミーシャ・ディディク(Ten)
ボリス(舅):クルト・リドゥル(Bs)
ジノーヴィ(カテリーナの夫):マリアン・タラバ(Ten)
アクシーニャ:ドンナ・エレン(Sop)
ボロ服の農民:ミヒャエル・ロイダー(Ten)
司祭:ヤヌシュ・モナルハ(Bs)
警察署長:甲斐栄次郎(Br)
ソネートカ:ナディア・クラステワ(Sop)
インゴ・メッツマッハー(指揮)
ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
【録音】
2009年10月23日 ウィーン国立歌劇場(ライヴ)
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