冨田勲の名作「惑星」がSACDサラウンドにてリメイク
冨田勲の名作「惑星」がリリースされたのは、今から30年以上も前の1977年のこと。冨田氏は、日本で初めてモーグ・シンセサイザーを個人輸入し、気の遠くなるような試行錯誤を繰り返して独自の「トミタ・サウンド」を編み出します。その手法は、「管弦楽曲の電子音による再創造」という新たな芸術として結実。彼の発表する革新的なアルバムは次々に世界を驚かせ、グラミー賞にノミネートされるほか、多くの音楽家・アーティストに大きな影響を与えました。電子音がかくも複雑で豊かな音楽を奏でることが出来るとは誰も想像ができなかったこの時期に、楽器としてのシンセサイザーは、冨田勲によってその地位を得たといって過言ではありません。そのサウンドは、今日聴いても全く色褪せておらず、当時のアナログ・シンセサイザーを駆使した柔らかで緻密な音は、現在の機器からは求められない貴重なものです。
さて、冨田氏が追い求めたもうひとつの革新は、立体音響でした。彼は、シンセサイザーを用いた創作の初期からステレオ(2チャンネル)を越える立体音響に強い関心を示し、デビューアルバムから5年後の1979年に、日本武道館で「エレクトロ・オペラ in 武道館」を開催。1984年には、オーストリアのリンツでドナウ川両岸の地上・川面・上空一帯を使って超立体音響を構成し、8万人の聴衆を音宇宙に包み込む壮大な野外イベント「トミタ・サウンドクラウド(音の雲)」と銘打ったコンサートを催し、以後、世界各地で展開してきました。
しかしながら、当時、サラウンド音響を十分に伝達できるメディアはなく、本格的なパッケージ作品は、当社からリリースした「惑星2003」(DVD-Audio)まで待つことになります。しかしながら、DVD-Audio という特殊な規格(当時)ゆえに、一般への普及には至らなかった点が惜しまれました。今回、SACDサラウンドというパッケージ・メディアとしては現在の最高位に位置づけられるフォーマットで、新たな「惑星」がリリースされることは、大きな話題となること必至です。サラウンドによる音楽創造の可能性をとことん追求した、いまだ進化を続ける世界のトミタの最前線を是非お聴きください。◆この発売のために、全体を新たにリメイク。トミタの旧作をベースにした再創造作品です。旧作に親しんだ方には、懐かしさと新鮮さ、初めて聴くリスナーには圧倒的な衝撃を与える、まさに究極の「惑星」であり、冨田勲ライフワークの到達点とも言えるアルバムです。
◆「小惑星イトカワ」、「太陽系外への旅」、という2つ新曲をプラス。前者は日本の宇宙航空技術の父と呼ばれる糸川英夫博士の少年のような宇宙にかける純粋な夢、宇宙への希望と糸川博士に対する静かなレクイエムのような曲です。
◆5.0チャンネルのSACDサラウンドによる理想的な立体音響(2chCDとのハイブリッドディスク)
◆ジャケットデザインは、CGによる創造的アートの草分けにして現在もその最先端にいる、川口洋一郎氏(東京大学大学院教授)の「宇宙探査機多重構造魚」。強い印象を与えるCGアートは、タイトルの親和性のみならず、技術をアートに応用することにおいて、その黎明期から現在に至るまで最前線にいる点でも共通する両者のコラボレーションという点でも意義深い。